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統合失調症スペクトラム障害の患者における回復に関連する因子:メタ解析のレビュー
SCHIZOPHR RES, 267, 201-212, 2024 Factors Associated With Recovery During Schizophrenia and Related Disorders: A Review of Meta-Analysis. Franco-Rubio, L., Puente-Martínez, A., Ubillos-Landa, S., et al.
背景
統合失調症スペクトラム障害(SSD)は重篤な精神障害であり,高額な医療・社会的コストを生じさせる。従って,SSDにおける回復の分析は,重要である。回復は多次元の構成概念であり,症状の寛解(SR)及び十分な心理社会的機能すなわち機能的回復(FR)に基づく臨床的回復(CR)と,回復プロセスまたは個人的回復(PR)の指標に基づく二つの視点を含む。
本研究の目的は,SSD患者のCRとPRに関連する因子を分析することである。
方法
本メタ解析のレビューでは,PubMed,Web of Science,ScienceDirect,Scopus,Biblioteca Virtual de Salud,Cinahlの六つの電子データベースを用いてPRISMAガイドラインに沿った系統的な検索を行い,SSDにおける回復に関連するメタ解析を特定した。その組み入れ基準は,①SSD(初回エピソード精神病を含む)の患者の回復に焦点を当てていること,②SR,FR,PRを分析していること,③CRまたはPRと他の変数との関連性を分析していること,④陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)などの妥当な尺度で回復を測定していること,⑤異なるタイプの回復の定量的尺度を含むこと,⑥査読付き論文であること,⑦研究サンプルの少なくとも80%がDSM-5やICD-11などの診断基準に沿ってSSDと診断されていること,とした。
組み入れられた研究における,効果の95%信頼区間(CI),Z値とp値を算出した。次に,異なるタイプの回復を,各変数について検出された平均rの観点から比較した。有意な異質性(p値≦0.05)の評価にはCochran Qb検定を適用した。
結果
14のメタ解析が組み入れられ,回復に関連する31の因子と87のエフェクトサイズが特定された。SRに関しては五つの因子と21のエフェクトサイズ(24.1%),FRに関しては28の因子と56のエフェクトサイズ(64.4%),PRに関しては五つの因子と10のエフェクトサイズ(11.5%)が特定された。
CRについては,精神病未治療期間(DUP)が短いこととSRの向上(Zr=0.24,95%CI:0.17-0.30),疾病未治療期間(DUI)が短いことと全般的機能の向上(Zr=0.34,95%CI:0.20-0.48)がそれぞれ関連していた。FRについては,レジリエンスが最も大きな効果を示した(Zr=0.67,95%CI:0.63-0.71)。また,職業的機能には発症前適応(Zr=0.34,95%CI:0.18- 0.49)が,社会的機能には身体的介入(Zr=0.71,95%CI:0.55- 0.86)が最も大きな効果を示した。PRについては,気分症状が軽度であることがその向上と関連していた(Zr=0.46,95%CI:0.42-0.50)。
全体として,レジリエンスは良好な回復と関連しており(Zr=0.67,95%CI:0.53-0.80),全体的効果はCRよりPRで大きかった[Zr(PR-CR)=0.07,Qb=3.45,p=0.05]。
結論
臨床の場において,回復に関連する因子を治療者が深く知っておくことは,CRに加えてPRを考慮したより包括的なケアを提供する一助になるであろう。
268号(No.4)2024年10月28日公開
(吉田 和生)
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