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COVID-19患者に対する差別とその後の精神病体験の関連:コホート研究
SCHIZOPHR RES, 267, 107-112, 2024 Association Between Discrimination and Subsequent Psychotic Experiences in Patients With COVID-19: A Cohort Study. Narita, Z., Hazumi, M., Kataoka, M., et al.
はじめに
パンデミックの初期から,COVID-19患者に対する差別が世界中で懸念されていた。COVID-19患者に対する差別とメンタルヘルスに対する悪影響の関連はいくつかの横断研究で示されているが,コホート研究は行われていない。本研究の目的は,COVID-19患者における感染症と関連した被差別体験と,その後の精神病体験との関連を調査することである。
方法
楽天インサイトを用い,オンラインで,2021年7~9月の間に基準時点の調査を行い,2022年7~9月の間に追跡調査を行った。基準時点において,COVID-19のPCR検査が陽性になったことがある人を対象に,COVID-19に関連した差別を受けたことがあるかどうかを質問した。
追跡調査では,精神病体験,自殺念慮,心的外傷後ストレス障害(PTSD)症状,精神的苦痛について評価した。共変数として年齢,性別,体格指数(BMI),同居者の有無,教育水準,雇用状態,ソーシャルネットワーク,喫煙の有無,精神的苦痛を調査した。
統計学的解析には,周辺構造モデルを用いた。感度分析として,未測定の交絡因子の影響を評価するためにE-valuesを解析した。
結果
7,760名のCOVID-19患者のうち,社会的背景データが欠損している患者を除外し,5,971名を組み入れた。このうち1,736名(29.1%)が何らかの差別を経験したことがあると回答した。
差別を経験した患者は基準時点において精神的苦痛が強い傾向にあったが,その他の項目は差別を受けていない患者と差が認められなかった。研究を完遂した2,559名のうち,追跡時点で253名(9.9%)が精神病体験をしており,185名(7.2%)に自殺念慮が認められた。差別を受けた患者は差別を受けなかった患者よりも,追跡期間中の精神病体験のリスクが高く[リスク差 6.6%,95%信頼区間(CI):4.0-9.9;相対リスク 1.82,95%CI:1.42-2.47],自殺念慮のリスクが高く(リスク差 4.2%,95%CI:2.0-7.0;相対リスク1.68,95%CI:1.26-2.35),PTSD症状のレベルが高く(β=0.34,95%CI:0.16-0.51),精神的苦痛のレベルが高かった(β=0.56,95%CI:0.04-1.08)。
感度分析として行ったE-valuesの評価では,COVID-19に関連する差別と,その後のメンタルヘルスへの影響との間に,測定していない交絡因子が存在することが示唆された。
結論
本研究では,COVID-19患者における被差別体験は,精神病体験,自殺念慮,PTSD症状,精神的苦痛といった,その後のメンタルヘルス上の諸問題と関連していることが示された。将来的には,反差別キャンペーンなど,メンタルヘルス上の悪影響に対する予防戦略についての研究が望まれる。
268号(No.4)2024年10月28日公開
(石田 琢人)
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