ドイツにおける精神科外来患者のための診断横断的グループ運動介入(ImPuls):実用的多施設共同ブロック無作為化第Ⅲ相対照試験の結果

LANCET PSYCHIATRY, 11, 417-430, 2024 A Transdiagnostic Group Exercise Intervention for Mental Health Outpatients in Germany (ImPuls): Results of a Pragmatic, Multisite, Block-Randomised, Phase 3 Controlled Trial. Wolf, S., Seiffer, B., Zeibig, J. M., et al.

はじめに

様々な精神疾患を有する患者を対象にした診断横断的グループ運動プログラムの効能に関するエビデンスは不足している。

ImPulsプログラムは,運動の効能とその長期維持に関する現在のエビデンスに基づき,様々な精神疾患の外来患者を対象に開発された運動プログラムである。本論文では,ImPuls+通常治療の長期的な効能を通常治療単独と比較することを目的とした。

方法

本試験は,ドイツ南西部の10ヶ所の異なる外来のリハビリ施設と医療施設で実施された。参加資格は,①18歳以上65歳未満,②指定した法定保険会社に加入している,③ドイツ語に堪能,④運動禁忌がない,⑤ICD-10により,中等度のうつ病,不眠症,広場恐怖症,パニック症,心的外傷後ストレス障害(PTSD)のうち一つ以上であると診断されていること,とした。

主要評価項目は全般的症状の重症度とし,ドイツ語版Brief Symptom Inventory(BSI-18)から導き出された全般的重症度指数(GSI)を用いて測定した。GSIは,身体化,抑うつ,不安の症状尺度にわたる全般的な精神的苦痛の評価を含んでいる。

主要転帰はintention-to-treat(ITT)サンプルで評価し,線形混合モデルを用いて分析した。

結果

2021年1月1日~2022年5月31日に合計600名の患者を募集し,このうち最終的に400名をImPuls+通常治療(n=199)と通常治療単独(n=201)に無作為に割り付けた。

これら400名の参加者の平均年齢は42.20歳(標準偏差13.23,範囲19~65)であり,このうち284名(71%)が女性,106名(27%)が男性,9名(2%)がその他であった。400名中,287名(72%)が中等度または重度のうつ病,81名(20%)が原発性不眠症,37名(9%)が広場恐怖症,46名(12%)がパニック症,72名(18%)がPTSDと診断された。

399名の参加者を対象とした一次治療企図解析では,ImPuls+通常治療が通常治療単独よりも優れており,BSI-18(主要評価項目)における補正後の差は6ヶ月後では4.11[95%信頼区間(CI):1.74-6.48;d=0.35(95%CI:0.14-0.56);p=0.0007],12ヶ月後では3.29[95%CI:0.86-5.72;d=0.28(95%CI:0.07-0.50);p=0.0080]であった(表)。

考察

本研究は,基準時点から6ヶ月の時点で,全体的な症状の重症度と,うつ病・全般性不安・パニック・PTSDの症状を,通常治療のみを受けた対照群と比較して減少させるという,ImPulsという診断横断的グループ運動介入と通常治療の併用による有効性を実証した。本研究の結果は,ImPulsのような運動と行動変容技術を組み合わせた集団介入は,中等度または重度のうつ病,不眠症,広場恐怖症,パニック症,PTSDに対する実行可能で有望な補助的治療法であることを示唆している。

表.主要転帰尺度及び副次転帰尺度の記述的要約と、治療企図サンプルの混合モデルの結果

268号(No.4)2024年10月28日公開

(野村 信行)

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