- トップ >
- 文献 >
- PSYCHOABSTRACT >
- 出生前のトピラマート,バルプロ酸,ラモトリギンへの曝露後の自閉症のリスク
出生前のトピラマート,バルプロ酸,ラモトリギンへの曝露後の自閉症のリスク
N ENGL J MED, 390, 1069-1079, 2024 Risk of Autism after Prenatal Topiramate, Valproate, or Lamotrigine Exposure. Hernández‑Díaz, S., Straub, L., Bateman, B. T., et al.
背景
多くのてんかん女性患者は妊娠中も抗てんかん薬を継続している。バルプロ酸や,古典的な抗てんかん薬のフェノバルビタール,カルバマゼピンは催奇形物質として知られ,過去25年間に承認された抗てんかん薬の中では例外的にトピラマートが口蓋裂のリスクを上昇させる。
また,バルプロ酸は神経認知機能の低下や自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症の増加にも関連している。ラモトリギンについては,神経発達への悪影響の報告は少ない。トピラマートは自閉スペクトラム症を増加させるという報告があるが,それは少数の症例に基づくものである。よって,てんかんやその他の疾患でトピラマートを使用している妊娠中の女性に対して情報を提供するために,トピラマートの自閉スペクトラム症へのリスクをより深く評価する必要がある。
方法
米国における2000~2018年のデータベースと2003~2020年の民間健康保険のデータベースから,妊婦とその子どものコホートを同定した。妊娠19週以降に少なくとも1回のトピラマートの処方を受けた妊婦を曝露群とし,バルプロ酸を陽性対照群,ラモトリギンを陰性対照群とした。最終月経90日前から出産まで一度も抗てんかん薬を処方されていない妊婦を非曝露対照群とした。子どもの自閉スペクトラム症の診断は1歳以降に行った。
結果
4,292,539名の妊婦のうち2,469名がトピラマート,1,392名がバルプロ酸,8,464名がラモトリギンを処方され,4,199,796名は抗てんかん薬を処方されていなかった。
コホート全体では,抗てんかん薬に曝露されていない子どもの8歳時における自閉スペクトラム症の累積罹患率は1.89%[95%信頼区間(CI):1.87-1.92]であった。てんかんを持つ女性患者の子どもにおける累積罹患率(95%CI)は,非曝露群で4.21%(3.27-5.16),トピラマート群で6.15%(2.98-9.31),バルプロ酸群で10.51%(6.78-14.24),ラモトリギン群で4.08%(2.75-5.41)であった。
てんかんを持つ女性患者の子どもにおける傾向スコアで補正した加重平均ハザード比については,非曝露群と比較して,トピラマート群では0.96(95%CI:0.56-1.65),バルプロ酸群では2.67(95%CI:1.69-4.20),ラモトリギン群では1.00(95%CI:0.69-1.46)であった。
結論
本研究における大規模なコホートにおいて,自閉スペクトラム症の罹患率は抗てんかん薬非曝露群よりも曝露群の罹患率が高かった。しかし,交絡因子を補正した後には,トピラマート群とラモトリギン群の罹患率は大幅に低下したが,バルプロ酸群のリスクは残存した。
268号(No.4)2024年10月28日公開
(小杉 哲平)
このウィンドウを閉じる際には、ブラウザの「閉じる」ボタンを押してください。