脳卒中後の運動回復のためのfluoxetine使用に関する不確かさ

Uncertainty about Fluoxetine Use for Poststroke Motor Recovery

大規模なランダム化試験は、脳卒中後6ヵ月間のfluoxetine使用による運動への利益を示さなかった。

虚血性脳卒中患者を対象としたこれまでのランダム化試験は、fluoxetineが、運動回復と機能的自立に関してプラセボよりも優れていることを示した(FLAME試験;NEJM JW Neurol Mar 2011Lancet Neurol 2011; 10:123)。しかし、この試験は比較的小規模で短期間(90日アウトカム)であり、脳卒中後の選択的セロトニン再取込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)の価値についての不確かさが残っていた。

今回、より大規模な試験(FOCUS試験)がより多くの情報を提供している。神経巣症状を伴う脳卒中患者約3,000人(平均年齢71歳)が、fluoxetine(20 mg)毎日投与群またはプラセボ群にランダムに割り付けられ、投与は脳卒中発症から2~15日後に開始され、6ヵ月間行われた。大部分の患者(90%)は虚血性脳卒中を有し、92%は脳卒中前には自立していた。主要評価項目である、6ヵ月の時点における修正Rankinスケールスコアの分布に、fluoxetine群とプラセボ群とのあいだで差はなかった。機能的自立は、fluoxetine群の36%とプラセボ群の38%で生じ、差は有意ではなかった。fluoxetine群の患者は、プラセボ群の患者よりも新規うつ病の割合が有意に低かったが(13% 対 17%)、骨折の割合が有意に高かった(2.9% 対 1.5%)。

コメント

FLAME試験後、一部の臨床家は時流に乗り、脳卒中後の患者にSSRIを、うつ状態にない患者にさえルーティンに処方し始めた。この研究の結果は、SSRIをルーティンに使用する診療に疑問を投げ掛けている。著者らは、利益を得たサブグループを同定することができなかった。他のデータが利用可能になるまで、SSRIの使用は脳卒中後のうつに対して正当化されうるが、SSRIによって機能回復が促進されるというのは、希望的観測なのかもしれない。

CITATION(S)

FOCUS Trial Collaboration. Effects of fluoxetine on functional outcomes after acute stroke (FOCUS): A pragmatic, double-blind, randomised, controlled trial. Lancet 2018 Dec 5; [e-pub]. (https://doi.org/10.1016/S0140-6736(18)32823-X)

Original Issue: Vol. 39 No. 2