2010~14年に、より多くの患者が中等度の貧血の状態で退院したが、6ヵ月の時点での再入院と死亡は減少した。
複数のランダム化臨床試験は、入院患者のいくつかのサブグループにおいて、中等度の貧血(ヘモグロビン値7~10 g/dL)に対して輸血を行わなくても安全であることを示している(NEJM JW Gen Med May 15 2015、BMJ 2015; 350:1354)。5年間(2010~14年)で44万5千人の患者の80万件を超える退院を対象としたこの後ろ向きコホート研究において、研究者らは、貧血に対する輸血を制限し、より低いヘモグロビン値を容認することの長期的影響を評価した。
関連する併存症で調整後、退院患者における中等度の貧血の有病率は2010年の20%から2014年には25%へと有意に上昇した。これは、入院中の輸血が有意に少なかったこと(2010年:患者1,000人あたり赤血球40単位 対 2014年:患者1,000人あたり赤血球29単位)を反映していた。中等度の貧血の状態で退院した約12万人のうち、退院から6ヵ月後までに貧血が回復した割合は研究期間中に減少した(2010年:66% 対 2014年:58%)。この事実にもかかわらず、ほかの重要な退院後6ヵ月のアウトカム、たとえば退院後の輸血(2010年:19% 対 2014年:17%)、再入院(37% 対 33%)、死亡(16.1% 対 15.6%)は有意に改善した。
CITATION(S)
Roubinian NH et al. Long-term outcomes among patients discharged from the hospital with moderate anemia: A retrospective cohort study. Ann Intern Med 2018 Dec 18; [e-pub]. (https://doi.org/10.7326/M17-3253)
Shander A and Goodnough LT. From tolerating anemia to treating anemia. Ann Intern Med 2018 Dec 18; [e-pub]. (https://doi.org/10.7326/M18-3145)
コメント
観察データに関する一般的な注意がここにも当てはまるが、この解析は、中等度の貧血の入院患者に輸血を行うという、費用がかかり、そしてときにリスクを伴う治療を最小限にしても安全であることを示唆している。貧血からの回復により時間がかかる患者もいるであろうが、そのための「対価」は、ほかのアウトカムへの利益を考えれば、価値がありそうである。