1件のメタアナリシスが、直接作用型経口抗凝固薬のほうが静脈血栓塞栓症の再発の管理に優れていること、その一方で、低分子量ヘパリンのほうが出血リスクが低いことを明らかにしている。
最近の2件の大規模試験で、研究者らは、活動性がん患者の静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)の管理における直接作用型経口抗凝固薬(direct-acting oral anticoagulant:DOAC)の使用を検討した(NEJM JW Gen Med Mar 1 2018、N Engl J Med 2018; 378:615;NEJM JW Gen Med Aug 15 2018、J Clin Oncol 2018; 36:2017)。今回研究者らは、ランダム化試験14件の患者4,600人超のデータのメタアナリシスを行い、VTEと活動性がんを有する患者の管理におけるさまざまなクラスの抗凝固薬、すなわちDOAC、低分子量ヘパリン[low-molecular-weight heparin:LMWH]、warfarinの有効性と安全性を評価した。
薬物クラスの直接比較では、VTEの再発予防に関してDOACはLMWHよりも有意に有効であり(リスク差[risk difference:RD]3.8%、治療必要数[number needed to treat:NNT]24)、LMWHはwarfarinよりも有意に有効であった(RD 8.9%、NNT 12)。LMWHとの直接比較では、DOACのほうが大出血が有意に多く(RD 3%、number needed to harm[NNH]34)、そのほとんどは消化管出血の超過(RD 8.7%、NNH 12)によるものと考えられた。死亡率は投与された抗凝固薬にかかわらず同程度であった。
CITATION(S)
Rossel A et al. Anticoagulant therapy for acute venous thrombo-embolism in cancer patients: A systematic review and network meta-analysis. PLoS One 2019 Mar 21; 14:e0213940. (https://doi.org/10.1371/journal.pone.0213940)
* Dr. AkbashevはGeorgia州AtlantaのEmory Universityの内科学准教授である。 (https://www.jwatch.org/editors/AU3296?editor=Mikhail Akbashev, MD)
コメント
このメタアナリシスは、がん患者のVTE再発予防において、DOAC(具体的にはedoxaban[Savaysa]とrivaroxaban[Xarelto])はLMWHよりも有効性は高いが、大出血の超過という犠牲を払うことを示している。リスクと利益を比較検討すると、VTEに対する抗凝固療法への実際的なアプローチには、上部消化管癌(DOACに関連する出血の超過がとくに問題となる)の患者にはLMWHを使用するが、他のがん患者にはDOACを使用する方向にすることが含まれるかもしれない。これらの決定には、患者に十分な説明を行ったうえでの話合いが組み込まれるべきである。