塞栓源不明の脳塞栓症後の脳梗塞予防に抗凝固薬が将来的にもちうる役割

Potential Future Role for Anticoagulants in Stroke Prevention After ESUS

塞栓源不明の脳塞栓症の患者で心房細動リスクが高い者は、抗凝固薬から利益を得るかもしれない。

塞栓性と思われる脳梗塞を起こす患者の一部では、決定的な高リスクの塞栓源が確認されないことがあり、塞栓源不明の脳塞栓症(embolic stroke of unknown source:ESUS)という概念につながっている。ESUS患者のなかに、抗凝固薬から利益を得られる者はいるだろうか? 研究者らはNAVIGATE ESUS試験に参加した患者7,112人(平均年齢67歳)を分析した。このランダム化試験は、ESUS患者全体で第Xa因子阻害薬rivaroxaban(Xarelto)とaspirinとを比較して、脳梗塞の発生率に差がないことを示した(NEJM JW Gen Med Jun 15 2018N Engl J Med 2018; 378:2191)。塞栓イベントの過剰リスクがある可能性のあるサブグループを評価するため、研究者らは次の3つの変数を検討した:(1)心房期外収縮(premature atrial contraction:PAC)の頻度、(2)左房径、(3)HAVOCスコア(うっ血性心不全、冠動脈疾患、年齢75歳以上、高血圧、確認されている弁膜疾患などに設定されたポイントをもとに算出)。

中央値で11ヵ月の追跡期間中、HAVOCスコア、PACの頻度に基づくサブグループでは、脳梗塞の発生率にrivaroxaban群とaspirin群とで差はなかった。しかし、左房径が4.6 cmを超える患者では、脳梗塞の発生率はrivaroxaban群のほうがaspirin群よりも低かった(1.7% 対 6.5%)。

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これらの観察は、「心房性心疾患(atrial cardiopathy)」または「心房筋障害(atrial myopathy)」の概念がますます検討されるようになっているため、興味深い。左房機能不全患者のなかには、心房細動がなくてさえ脳塞栓を生じうる者がいる。ESUSを発症し、左房拡大を認める患者に抗凝固療法を行うのは早計であるが、進行中のARCADIA試験は、ESUS患者を対象に抗凝固療法としてapixabanとaspirinとを比較し、心房性心疾患のマーカーを検討しており、指針が得られるであろう。

CITATION(S)

Healey JS et al. Recurrent stroke with rivaroxaban compared with aspirin according to predictors of atrial fibrillation: Secondary analysis of the NAVIGATE ESUS randomized clinical trial. JAMA Neurol 2019 Apr 8; [e-pub]. (https://doi.org/10.1001/jamaneurol.2019.0617)

Original Issue: Vol.39 No.11