強化血糖コントロールは、心血管系への持続的な利益をもたらさなかった。
VA Diabetes Trialは、2008~09年に公表された、2型糖尿病罹病期間の長い高齢患者に対する強化血糖コントロールは主要有害心血管イベントの発生率を有意には低下させなかったランダム化試験3件のうちの、1件である(NEJM JW Gen Med Jan 15 2009、N Engl J Med 2009; 360:129)。5.6年の試験期間中、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の平均は、強化療法群約7%、標準療法群約8.5%であった。試験後4年間の追跡期間中、もとのランダム化された群のあいだのHbA1c値の差は、小さくなったが完全にはなくならず、主要心血管イベントに小さな差が生じた(強化療法群ではイベントが1,000人年あたり9件少なかった;P=0.04)(NEJM JW Gen Med Jul 1 2015、N Engl J Med 2015; 372:2197)。
今回、同じ研究者らが追加のデータを提供している。さらに5年(計15年)の追跡期間中、2群の心血管イベントの累積発生率は収束していき、群間に有意差はなくなった。この最後の5年間のHbA1c値は2群で同程度であった。
CITATION(S)
Reaven PD et al. Intensive glucose control in patients with type 2 diabetes — 15-year follow-up. N Engl J Med 2019 Jun 6; 380:2215. (https://doi.org/10.1056/NEJMoa1806802)
Lipska KJ and Laiteerapong N. Lack of glycemic legacy effects in the Veterans Affairs Diabetes Trial. N Engl J Med 2019 Jun 6; 380:2266. (https://doi.org/10.1056/NEJMe1905495)
コメント
1型糖尿病患者と新規発症の2型糖尿病患者を対象とした研究は、いわゆる「遺産効果」、すなわちある期間の強化血糖コントロールは、その後、コントロールが緩められたときでさえより低い心血管イベント発生率を伴うことを示唆した。しかしこの研究では、遺産効果の明確な証拠は認められず、10年の時点で心血管イベントに認められた統計学的にかろうじて有意な減少は、15年の時点では明らかでなかった。2型糖尿病罹病期間の長い高齢患者では、厳格な血糖コントロール以外の、心血管リスクを低減させるストラテジーが強調されるべきである。