microbiomeはどのようにして竸技能力を高めるのか

How the Microbiome Might Enhance Athletic Performance

マラソン選手は、腸内のVeillonella atypicaの数がスポーツ選手でない者よりも多かった。

microbiomeは、ヒトの生理機能に影響を及ぼす多数の分子を産生する。microbiomeがどのようにして競技能力に影響を及ぼすのかを検討するため、研究者らは、Boston Marathonの1週間前から1週間後までランナー15人から便検体を毎日採取し、そのmicrobiomeの所見を、ほとんど運動しない対照者10人から成る群の所見と比較した。次にそれらの所見を、別のスポーツ選手と対照者から成る群で確認した。

スポーツ選手は、ある細菌種、Veillonella atypicaの数が対照者よりも多かった。この細菌種は運動後さらに増加していた。さらに、この細菌の乳酸をプロピオン酸に変換する遺伝子は、運動によって活性化されていた。次に研究者らは、V. atypica(スポーツ選手から分離)をマウスに投与した。V. atypicaを投与されたマウスは、対照としてある乳酸桿菌(lactobacillus)を投与されたマウスよりも長い時間運動することができた。運動によって生じた血中乳酸は、マウスの腸管内腔に流れ込み、そこで乳酸はV. atypicaによってプロピオン酸に代謝されていた。その後プロピオン酸は結腸内で再吸収され、循環に入っていた。プロピオン酸を直腸から注入したマウスも、より長い時間運動することができた。これは、プロピオン酸の付加(単に乳酸の減少ではなく)が運動能力を向上させているのかもしれないことを示唆している。

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ヒトのスポーツ選手についての今回の研究は、生理学的機序を解明するためのマウスでの研究を組み合わせており、腸内の少なくとも1種の細菌種が、運動中に産生された乳酸のプロピオン酸への変換を促進することによって、競技能力を高めるかもしれないことを示している。この研究デザインでは、研究者らはある明白な疑問、すなわち、選手が生来もっているmicrobiomeが一流のマラソン選手をさらに優れた者にするのか、それともマラソンのトレーニングプログラムがmicrobiomeを有益なものに変えるのか、あるいはその両方なのか、というに疑問に取り組むことはできなかった。この研究は、また別の疑問も示唆している――一流のスポーツ選手はいつの日か、運動能力向上薬だけでなく、運動能力を高める腸内細菌に関してもスクリーニングを受けることになるのであろうか?

CITATION(S)

Scheiman J et al. Meta-omics analysis of elite athletes identifies a performance-enhancing microbe that functions via lactate metabolism. [斜体_S]Nat Med 2019 Jul; 25:1104. (https://doi.org/10.1038/s41591-019-0485-4)

Original Issue: Vol.39 No.17