終末期がん患者では多くの予防的薬物治療が継続されている。
糖尿病、高血圧、高脂血症、その他頻度の高い病態を治療するための薬物は、推測されるに、悪性腫瘍を有し、余命が短い高齢の患者にほとんど利益をもたらさない。終末期がん患者でこれらの予防的薬物治療が中止される頻度はどの程度であろうか?
研究者らは、固形がんの診断があり2007~13年に死亡したスウェーデン人の患者(年齢65歳以上)に処方された薬物を表にまとめた。造血器腫瘍の患者は除外され、また事故死と思われた患者も除外された。150,000人を超える患者において、処方された薬物数の平均は、人生の最後の1年間に7剤から10剤に増加した。糖尿病治療薬は、1年間以上それらを投与されていた患者の87%で、人生の最終月まで継続された。ビタミン製剤、スタチン、降圧薬、ビスホスホネート製剤はそれぞれ約60%で継続された。がんが1年以上前に診断されていた患者とより最近診断された患者とのあいだで薬物の継続に大きな違いはみられず、また、とくに悲惨な予後を有する腫瘍(すなわち、脳、肺、肝臓、膵臓)の患者の個別の分析でも大きな違いはみられなかった。
CITATION(S)
Morin L et al. Preventive drugs in the last year of life of older adults with cancer: Is there room for deprescribing? Cancer 2019 Jul 1; 125:2309. (https://doi.org/10.1002/cncr.32044)
コメント
これらの研究者らは、不必要な予防薬が薬剤請求額を約20%上昇させたと計算した。また研究者らは、これらの薬物が不必要な副作用を引き起こし、「価値の低い医療」に寄与したかもしれないと結論付けた。その主張は確かに妥当である。しかし、医療を中止することを患者と話し合うことがいかに困難でありうるか(そしてそれに比べて、ただ処方し続けることがいかに努力を要しないか)を考慮すると、これほど多くの薬物治療が実際にスウェーデンの医師らによって中止されたことに私は感銘を受けている。これと比較して、ほかの国ではどのようなパターンであろうと、私は思う。