以前に報告された重篤な有害事象の過剰なリスクは、腸管感染症を除き、明白ではなかった。
近年、複数の観察研究が、プロトンポンプ阻害薬(proton-pump inhibitor:PPI)の使用と、肺炎、大腿骨近位部骨折、認知症、腸管感染症(Clostridium[Clostridioides]difficileを含む)、脳血管イベント、慢性腎不全、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)、死亡などの、いくつかの有害アウトカムとの関連を示唆している。しかしこれらの研究には、交絡因子の残存やその他のバイアスをもたらすかもしれない、内在する方法論的欠陥による限界がある。
安定冠動脈疾患または末梢動脈疾患を有する患者に対する抗血栓療法の1件の大規模な前向き研究(NEJM JW Gen Med Oct 1 2017、N Engl J Med 2017; 377:1319)の追跡の分析で、研究者らは高齢者17,600人(65歳以上、78%が男性、23%が喫煙者)において、PPI使用(pantoprazole、40 mgを1日1回)の安全性をプラセボの安全性と比較した。中央値で3年の追跡期間中、結果は以下のとおりであった。
- 肺炎、骨折、新たな糖尿病の診断、慢性腎臓病、認知症、COPD、胃粘膜萎縮、がん全体、特定の原発部位のがんの発生率に有意差は認められなかった。
- C. difficile以外の腸管感染症はpantoprazoleを使用した患者で頻度がより高かった(1.4% 対 1.0%、P=0.04)。
- C. difficile感染はpantoprazoleの使用で2倍多かったが、その差は統計的に有意ではなかった(イベント総数13件)。
CITATION(S)
Moayyedi P et al. Safety of proton pump inhibitors based on a large, multi-year, randomized trial of patients receiving rivaroxaban or aspirin. Gastroenterology 2019 Sep; [e-pub]. (https://doi.org/10.1053/j.gastro.2019.05.056)
コメント
これは今までで最大のPPIの研究であり、PPIの長期安全性が評価された最初の前向きランダム化試験である。これらのデータは、わずかに過剰な腸管感染症を除いて、PPIの優れた安全性プロファイルを実証しており、最近の観察研究による重篤な有害事象の知見に疑問を投げ掛けている。医師らは常に、処方する薬すべてについてリスクと利益を慎重に検討し、推奨されている用量と投与期間でのみ使用しなければならないが、これらの質の高い長期の安全性データは、医師とPPIを必要とする患者の双方を安心させるはずである。