負荷で誘発された虚血は予後不良の予兆でもなければ、最善の治療アプローチを予測するものでもないかもしれない。
負荷試験が導入されてから何年も経過しているにもかかわらず、安定した冠動脈疾患の患者における負荷試験の予後に関する重要性と、血行再建を決定するうえでの価値については議論が続いている。COURAGE試験では、虚血の存在は治療効果を修飾しなかった(NEJM JW Gen Med Apr 15 2007、N Engl J Med 2007; 356:1503)。この事後解析で研究者らは、安定した多枝冠動脈疾患を有し、心室収縮機能が保持されている患者535人で至適薬物療法、経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)、冠動脈バイパス術の長期効果を比較したランダム化臨床試験MASS IIのデータ(NEJM JW Cardiol May 9 2007; [e-pub]、Circulation 2007; 115:1082)を利用した。
参加者の半数に、ランダム化前の運動負荷試験で、負荷誘発性虚血が認められた。ベースライン時の虚血に、追跡調査10年の時点での主要有害心血管イベントの発生との関連は認められなかった。またベースライン時の虚血は、左室駆出率のより大きな低下との関連も認められず、PCIと至適薬物療法とのあいだに統計的な差がないことを修飾することもなかった。
CITATION(S)
Larrosa Garzillo C et al. Association between stress testing–induced myocardial ischemia and clinical events in patients with multivessel coronary artery disease. JAMA Intern Med 2019 Jul 22; [e-pub]. (https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2019.2227)
コメント
単一試験の患者集団に対するこの事後解析によると、運動負荷試験で虚血が認められることは、安定した多枝冠動脈疾患患者における有害事象の発生や駆出率の変化を予測しなかった。画像検査によって負荷試験の結果に関するより詳細な情報が得られたのではないか、という批判があるかもしれない。いずれにせよこの結果は、われわれがよく用いる検査ストラテジーの価値について、最新のデータが必要であることを指摘している。