心房細動と慢性冠動脈疾患がある患者には、抗血小板薬を含まない抗凝固療法が最善である。
いくつかのランダム化試験(たとえばRE-DUAL試験、NEJM JW Gen Med Oct 1 2017、N Engl J Med 2017; 377:1513)が、大部分の心房細動(atrial fibrillation:AF)患者に対して経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)後1年間の標準的な治療は、抗凝固薬+1種類の抗血小板薬であることを示している。しかし、PCI後1年以降のデータは限られている。AFIRE試験はこの集団の治療に明快な答えを提供している。
日本の研究者が、1年以上前にPCIまたは冠動脈バイパス術を受けているか、血管造影で血行再建を必要としない冠動脈疾患(coronary artery disease:CAD、50%以上の狭窄)が確認されているAF患者2,236人を、rivaroxaban(Xarelto)単独か、rivaroxaban+1種類の抗血小板薬(aspirinまたはP2Y12阻害薬)にランダムに割り付けた。主要有効性評価項目である脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、血行再建を必要とする不安定狭心症、全死因死亡の発生率について、rivaroxaban単独は、併用療法に対し非劣性であった(患者年あたりそれぞれ4.14% 対 5.75%)。事前に規定された副次エンドポイントである全死因死亡はrivaroxaban単独のほうが併用療法よりも有意に少なく、(1患者年あたり1.85% 対 3.37%)、大出血についても同様であった(1患者年あたり1.62% 対 2.76%)。
CITATION(S)
Yasuda S et al. Antithrombotic therapy for atrial fibrillation with stable coronary disease. N Engl J Med 2019 Sep 2; [e-pub]. (https://doi.org/10.1056/NEJMoa1904143)
コメント
われわれはついに明確な答えを得た:AFと慢性CADがある患者は、抗凝固薬の投与のみを受けるべきであり、抗血小板薬の投与を受けるべきではない。既存のガイドラインはこの推奨を行っていたが、基にしているエビデンスが不十分であり、多くの患者が抗凝固薬+抗血小板薬の投与を受け続けていた。これらの新しいデータは、そのような診療を終わらせるのに役立つであろう。なお、AFIRE試験では腎機能の正常な患者へのrivaroxabanの用量は15 mgであったが、典型的な日本人患者でのこの用量は、典型的な白人患者ではrivaroxaban 20 mgと同等の血清中濃度となり、この事実は個別化治療の際に覚えておくべきである。