心血管疾患の一次予防にpolypill?

The "Polypill" for Primary Cardiovascular Prevention?

イランで行われた1件の研究で、固定用量の4剤の併用が有害心血管イベントの発生率を低下させた。

心血管(cardiovascular:CV)リスクを低下する可能性のある複数のクラスの薬物を含有する1つの固定用量錠剤である「polypill」(複合錠剤)は、とくに低所得国で、広範な規模でのCV疾患予防方法として提案されている。イランの主に農村地域で行われたクラスターランダム化試験で、研究者らは6,800人(年齢範囲50~75歳)をpolypill(hydrochlorothiazide 12.5 mg、enalapril 5 mg、aspirin 81 mg、atorvastatin 20 mg)の連日投与群と対照群に割り付けた。参加者の大部分(89%)にCV疾患の既往はなかったが、半数に既知の高血圧があった。なんらかのCV治療薬を服用していたのは参加者の3分の1のみであった。

5年の追跡期間中、主要有害CVイベントの発生率は、polypill群のほうが対照群よりも有意に低かった(5.9% 対 8.8%)。この差は主に、(脳卒中、心不全、突然死ではなく)冠動脈イベントが少なかったことで生じていた。全死因死亡率(5.9%と6.5%、P=0.43)と副作用は2群で同程度であった。

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これらの結果はpolypillの考え方を支持しているが、研究には限界がある。たとえば、当初14,000人近くがランダムに割り付けられていたが、その後半数がさまざまな理由により除外されており、その一部は結果にバイアスを与えた可能性がある。New York Times(2019年8月22日版)の論評では、記者がpolypillを支持する専門家と懐疑的な専門家数人にインタビューを行った。予防的介入の個別化に慣れている多くの臨床家(私自身を含む)は、この「画一的な」方法に抵抗を覚えるが、頭ごなしに否定すべきではない――さらなる試験で良好なアウトカムが得られるならば、なおさらそうである。

CITATION(S)

Roshandel G et al. Effectiveness of polypill for primary and secondary prevention of cardiovascular diseases (PolyIran): A pragmatic, cluster-randomised trial. Lancet 2019 Aug 24; 394:672. (https://doi.org/10.1016/S0140-6736(19)31791-X)

Original Issue: Vol.39 No.19