降圧治療に適格な患者をどのように選択すべきか?

How Should We Select Patients for Blood Pressure–Lowering Treatment?

1件の後ろ向き研究は、ベースラインの血圧にかかわらず全体的な心血管リスクに注目すべきであることを示唆している。

降圧治療は、ベースラインの血圧値、全体的な心血管リスク、またはこの2つの組合せのいずれに基づいて開始されるべきであろうか? 1件の後ろ向き研究で研究者らは、ベースラインの時点で心血管疾患を有しない英国のプライマリケア患者120万人(年齢範囲30~79歳)のコホートでの心血管アウトカムを解析した。この研究者らは、降圧治療の4つの選択ストラテジーで、それぞれ心血管アウトカムがどの程度変化するかを計算した。

  • 血圧>140/90 mmHgのみ
  • 血圧>140/90 mmHgであり心血管リスクスコア>20%(QRISK2で算出)か既知の糖尿病または腎疾患を有する、あるいは血圧>160/90 mmHgのみ
  • 血圧>140/90 mmHgかつ心血管リスクスコア>10%
  • 心血管リスクスコア>10%のみ

治療に適格な患者は、血圧高値のみに基づいた場合、他のどのストラテジーよりも多かった(39% 対 22%、27%、29%)。平均で4.3年の追跡期間中、心血管リスクのみのストラテジーは、心血管疾患を発症した患者を他のどのストラテジーよりも多く同定した(68% 対 63%、47%、56%)。降圧治療が心血管リスクを20%低下させると仮定すれば、10年間で1件の有害心血管アウトカムを予防するための治療必要数(number needed to treat)は、心血管リスクのみのストラテジーのほうが、他のストラテジーよりもわずかに小さくなる(27 対 38、28、29)。

コメント

これらのデータは、降圧治療は、ベースラインの血圧にかかわらず心血管リスクが高い患者を対象とした場合にもっとも有効であることを示唆している。但し書きとしては、この研究コホートに収縮期血圧が120 mmHg未満の患者がほとんどいなかったことである。そのため、この解析は心血管リスクが高いがベースラインの血圧が低い患者(たとえば高脂血症を有し、血圧110/60 mmHgの65歳男性喫煙者)に対応していない。血圧と心血管リスクの両方の基準を用いることを推奨する現在のガイドラインは、再評価されるべきかもしれない。

CITATION(S)

Herrett E et al. Eligibility and subsequent burden of cardiovascular disease of four strategies for blood pressure-lowering treatment: A retrospective cohort study. Lancet 2019 Aug 24; 394:663. (https://doi.org/10.1016/S0140-6736(19)31359-5)

Kahan T. Strategies to identify patients for antihypertensive treatment. Lancet 2019 Aug 24; 394:615. (https://doi.org/10.1016/S0140-6736(19)31665-4)

Original Issue: Vol.39 No.19