粘膜の損傷を有する人は、粘膜の損傷がない人よりParkinson病を発症することが有意に多かった。
α-シヌクレインで構成されるLewy小体は、Parkinson病(Parkinson disease:PD)の病理学的特徴である。以前の研究において、マウスの十二指腸および幽門筋層に病的なα-シヌクレイン線維が注入されると、迷走神経、後脳、黒質へと移動し、この移動に続いてドパミン作動性ニューロンが消失した(NEJM JW Gen Med Jul 25 2019 [e-pub]、Neuron 2019; 103:1)。
電子診療録を用いて研究者らは、上部消化管内視鏡検査を受け平均15年間追跡された、既知のPDを有しない米国の患者9,350人を同定した。内視鏡検査では、2,337人にびらん、食道炎、潰瘍、消化性障害が認められた。粘膜の損傷を有する各患者を、年齢、性、消化管内視鏡検査日が同じで、粘膜の損傷を有しない患者とマッチさせた。交絡する可能性のある因子で補正後、粘膜の損傷を有する患者は粘膜の損傷を有しない患者よりもPDを発症することが有意に多かった(2.2% 対 0.5%;補正ハザード比1.76)。便秘または嚥下障害の既往、より高齢であること、併存疾患がより多いことは、より高いPDリスクと関連していた。
CITATION(S)
Chang JJ et al. Upper gastrointestinal mucosal damage and subsequent risk of Parkinson disease. JAMA Netw Open 2024 Sep 5; 7:e2431949. (https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2024.31949)
コメント
この臨床研究は、PDの一部の症例は腸で始まることを示す、過去のヒトの疫学研究および動物での研究と一致するものである。腸内microbiomeは、腸管壁の炎症を誘発し、病的な(misfoldingした)α-シヌクレインを産生することが知られており、このα-シヌクレインはその後、迷走神経終末に流入しうる。しかしこの研究は、粘膜の損傷が腸内microbiome、非ステロイド抗炎症薬の慢性的使用、Helicobacter pyloriの感染、またはその他の原因によって引き起こされたかどうかについては、検討していない。