このような患者では、駆出率が維持されているか低下しているかにかかわらず、週1回のsemaglutideが全般的な心血管アウトカムを改善した。
semaglutideは、駆出率が維持された心不全(heart failure and preserved ejection fraction:HFpEF)患者の症状を改善する(NEJM JW Gen Med Sep 15 2023、N Engl J Med 2023; 389: 1069)。しかし、駆出率が低下した心不全(heart failure and reduced ejection fraction:HFrEF)患者におけるその効果は十分に研究されていない。
企業の支援を受けたSELECT試験において研究者らは、過体重または肥満を有するが糖尿病を有しないアテローム動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease:ASCVD)患者18,000人で、semaglutideの週1回皮下投与をプラセボと比較して評価した。この試験の主な焦点は、最初に発表された結果に記載されているとおり、心不全患者のアウトカムではなくASCVDイベントの二次予防であった(NEJM JW Gen Med Dec 15 2023、N Engl J Med 2023; 389:2221)。今回、研究者らはベースライン時に心不全を有していた4,300人(53%がHFpEF、31%がHFrEF、残りは未分類)のサブグループのアウトカムを発表した。
平均で40ヵ月間の追跡期間中、semaglutide群の心不全患者はプラセボ群の患者と比較して、心血管関連死または心不全による入院からなる複合アウトカムの発生が有意に少なかった(ハザード比[hazard ratio:HR]0.76、絶対差約7% 対 約9%)。この差の大部分は、心血管関連死がより少ないことに起因していた。そのほかのさまざまな心血管アウトカムもsemaglutideのほうが優れていた。相対的利益はHFrEF患者とHFpEF患者で同程度であった。
CITATION(S)
Deanfield J et al. Semaglutide and cardiovascular outcomes in patients with obesity and prevalent heart failure: A prespecified analysis of the SELECT trial. Lancet 2024 Aug 24; 404:773. (https://doi.org/10.1016/S0140-6736(24)01498-3)
コメント
semaglutideは、心不全患者の治療に特定して米国FDAに承認されているわけではない。しかし、semaglutideの承認された適応症とともに心不全を有する患者にとって、これらの結果は安心させるものであり、semaglutideが安全で、かつ有用である可能性があることを示唆している。注意点の一つに、SELECT試験に登録された心不全患者は全体として、心不全の管理に特化した試験の大部分に登録された患者よりも、心不全が進行していなかったことがある。