GLP-1受容体作動薬と重度の抑うつの関連に関するさらなるデータ

More Data on the Association of GLP-1 Receptor Agonists with Severe Depression

これらの薬物は精神疾患の診断のない患者に対して安全なようであるが、疑問が残っている。

観察データはglucagon-like peptide-1(GLP-1)受容体作動薬と重度抑うつとの関連を示唆している。しかし、因果関係を示す説得力のあるエビデンスは得られていない(NEJM JW Gen Med Jun 1 2024)。今年これまでに、米国FDAは、症例報告の予備的レビューは自殺傾向とGLP-1作動薬の使用とのあいだに「明確な関連性はない」ことを示したという声明を発表した。

以下のとおり、3件の新たな研究がさらなる洞察を追加している。

  • スウェーデンおよびデンマークの後ろ向き研究において研究者らは、全国規模のデータを用いて、GLP-1作動薬を開始した患者とsodium–glucose cotransporter-2(SGLT-2)阻害薬を開始した患者の自殺傾向を比較した。300,000人の患者において、平均で約2.5年間の追跡期間中、自殺傾向に2群間で差はなかった。薬物の開始前1年間に抑うつまたは不安の診断を受けた患者は約1.5%のみであった。
  • FDAによるsemaglutideの承認に影響を与えたプラセボ対照ランダム化試験からの研究(患者約3,700人)において研究者らは、68週間の追跡期間中に抑うつの悪化または自殺傾向の所見を認めなかった。しかし、抑うつ、重度の精神障害、自殺念慮の既往を有する患者は除外された。
  • WHOの医薬品安全性監視データベースを用いた症例対照研究において、semaglutideは不均衡な数の自殺傾向の報告と関連したが、liraglutideは関連しなかった。研究者らが抗うつ薬使用者を除外した場合には不均衡は生じなかった。

コメント

まとめるとこれらの研究は、精神保健上の診断を受けていない患者において、GLP-1作動薬は抑うつまたは自殺傾向を伴わないことを示唆している。しかし、精神保健上の障害を有する患者におけるこれらの薬物の安全性に関する知識が不足していることを考慮すると、医薬品安全性監視データベースにおける自殺傾向との正の関連と、自殺傾向を有する患者において抑うつが併存する確率は懸念される。私の考えでは、臨床家はGLP-1作動薬を開始する前に精神保健に関する病歴を得、抑うつのスクリーニングを行い、あるかもしれない精神保健上のリスクについて患者と前もって話し合うべきである。

CITATION(S)

Ueda P et al. GLP-1 receptor agonist use and risk of suicide death. JAMA Intern Med 2024 Sep 3; [e-pub]. (https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2024.4369)

Wadden TA et al. Psychiatric safety of semaglutide for weight management in people without known major psychopathology: Post hoc analysis of the STEP 1, 2, 3, and 5 trials. JAMA Intern Med 2024 Sep 3; [e-pub]. (https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2024.4346)

Schoretsanitis G et al. Disproportionality analysis from World Health Organization data on semaglutide, liraglutide, and suicidality. JAMA Netw Open 2024 Aug; 7:e2423385. (https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2024.23385)

Original Issue: Vol.44 No.20