肝疾患と糖尿病を有する患者に対するGLP-1受容体作動薬

GLP-1 Receptor Agonists for Patients with Liver Disease and Diabetes

1件の後ろ向き研究で、GLP-1作動薬は肝硬変への進行がより遅いことを伴った。

代謝異常関連脂肪性肝疾患(metabolic dysfunction–associated steatotic liver disease:MASLD)を有する患者におけるいくつかの小規模な第2相臨床試験で、glucagon-like peptide-1(GLP-1)受容体作動薬は、脂肪性肝炎の組織学的な回復を伴った(NEJM JW Gastroenterol Feb 2016Lancet 2016; 387:679、N Engl J Med 2021; 384:1113)。しかし、MASLD患者におけるGLP-1作動薬の使用に伴う臨床アウトカムについてはほとんどわかっていない。

肝硬変への進行および関連する合併症に対するGLP-1作動薬の効果を評価するために、研究者らは、MASLDと糖尿病を有し、GLP-1作動薬の投与を開始した米国Veterans Health Affairsの患者16,000人のコホートを研究した。これらの患者は、dipeptidyl peptidase-4(DPP-4)阻害薬(MASLDの進行に影響を及ぼさないと考えられている)の投与を受けていた患者16,000人と傾向スコア(propensity score)でマッチされた。肝硬変を有しない患者では、GLP-1作動薬はDPP-4阻害薬と比べて、肝硬変への進行リスクがより低いこと(ハザード比[hazard ratio:HR]0.86、イベントが1,000人年あたり約1.1件少ない)、および全死因死亡率がより低いこと(HR 0.89、死亡が1,000人年あたり約2.6件少ない)を伴った。確立された肝硬変を有する患者(研究対象集団の約10%)では、肝硬変合併症のリスクにも全死因死亡率にも有意な差は認められなかった。

コメント

これらの観察結果は、MASLDと糖尿病を有し、まだ肝硬変に進行していない患者において、GLP-1作動薬による臨床アウトカムの比較的小さいが意味のある改善を示唆している。代謝異常関連脂肪性肝炎に対するsemaglutideの1件の進行中の試験(ESSENCE研究)は、MASLDに対するGLP-1作動薬の有効性についてより決定的な理解をもたらすはずである。GLP-1作動薬の処方には依然として費用が障壁となっているが、resmetiromよりは手頃である(Rezdiffra; NEJM JW Gen Med Apr 15 2024N Engl J Med 2024; 390:559)。resmetiromは米国FDAの承認を受けた唯一のMASLD治療薬であり、年間45,000ドルを超える費用がかかりうる。

CITATION(S)

Kanwal F et al. GLP-1 receptor agonists and risk for cirrhosis and related complications in patients with metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease. JAMA Intern Med 2024 Sep 16; [e-pub]. (https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2024.4661)

Original Issue: Vol.44 No.20