乳酸Ringer液は、生理食塩水と比較して、わずかではあるが有意なアウトカム改善を伴った。
鎌状赤血球症(sickle cell disease:SCD)患者における血管閉塞エピソード(vaso-occlusive episode:VOE)はしばしば体液量減少を合併し、初期蘇生輸液としては生理食塩水が一般に選択される輸液である。しかし、乳酸Ringer液(lactated Ringer’s solution:LR)などのほかの血漿増量剤の相対的な有効性は不明である。この観察研究(標的試験エミュレーション[target trial emulation]を使用)で研究者らは、VOEで入院した米国の成人SCD患者55,000人(年齢の中央値30歳)を評価した。患者は入院1日目にLR(3,500人)または生理食塩水の静脈内投与を受けた。
LRの投与を受けた患者は、生理食塩水の投与を受けた患者よりも入院していない日数(30日目まで)が有意に多かった(差の平均0.4日)。LRの投与を受けた患者は、入院期間も有意に短く、30日再入院のリスクも有意に低く、オピオイドを使用しない日数も有意に多かった。院内死亡率、臓器補助を使用しない日数、輸血を受けない日数に差は認められなかった。
CITATION(S)
Alwang AK et al. Lactated ringer vs normal saline solution during sickle cell vaso-occlusive episodes. JAMA Intern Med 2024 Sep 9; [e-pub]. (https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2024.4428)
コメント
実験に基づくエビデンスは生理食塩水が赤血球の鎌状化を促進することを示唆しており、そのことがこの研究におけるLRの小さな有益な効果を説明するかもしれない。患者が投与を受けた輸液の量と継続中の輸液の種類は報告されておらず、SCDに伴うことがある慢性腎臓病やうっ血性心不全などの病態を考慮すると、必要な蘇生輸液量はVOEにおいてさまざまである。最後に、鎌状化を減少させるかもしれない低張性輸液は検討されなかった。これらの結果を考慮して、私は、初期蘇生輸液を必要とする患者のVOE時には生理食塩水よりもLRを優先的に使用するが、維持療法では引き続き低張性輸液への変更を行っていく。