糖尿病患者における強化降圧治療と標準降圧治療との比較

Intensive vs. Standard Blood Pressure Lowering in Patients with Diabetes

1件のランダム化試験では、収縮期血圧を約120 mmHgに低下させることで脳卒中がより減少した。

約15年前、ACCORD BP試験の結果が発表された(NEJM JW Gen Med Apr 15 2010N Engl J Med 2010; 362:1575)。この北米の試験では、2型糖尿病を有し、血圧が高く、心血管リスクが高い患者4,700人が、収縮期血圧の「強化された」目標値または「標準的」な目標値(それぞれ120 mmHg未満または140 mmHg未満)にランダムに割り付けられた。5年の時点で、有害心血管アウトカムの発生率におけるわずかな差(8.8% 対 10.0%)は統計学的有意には達しておらず、至適な血圧目標値は未解決のままであった。

今回、中国の研究者らは、2型糖尿病を有する高リスクの患者約13,000人を含む同様のランダム化試験でこれらの血圧目標値を比較した。1年の時点での収縮期血圧の平均は、強化治療で122 mmHg、標準治療で133 mmHgであった。4年の時点で、以下のアウトカムが認められた。

  • 脳卒中、心筋梗塞、心不全の治療、心血管関連死の複合主要アウトカムの発生率は、強化治療のほうが標準治療よりも有意に低かった(6.1% 対 7.7%)。強化治療で脳卒中がより少ないこと(4.4% 対 5.6%)がこの差の大部分を説明していた。
  • 全死亡率は2群で同程度であった。
  • 症状のある低血圧は、強化治療を受けた患者8人および標準治療を受けた患者1人にのみ発現したと報告された。

コメント

この試験とACCORD試験の心血管アウトカムは実際には同様であり、一部には、統計的な有意差は試験規模の大きな差を反映している。さらに、複合結果は、糖尿病ではない患者で同じ血圧目標値を比較したSPRINT試験の結果と同様である(NEJM JW Gen Med Dec 15 2015N Engl J Med 2015; 373:2103)。注目すべきことに、これらの各試験で、強化治療での収縮期血圧の平均は「ただの」約120 mmHgであった。したがって、この結果は収縮期血圧を120 mmHg台前半まで低下させることを支持するものであり、必ずしもすべての患者で120 mmHg未満に押し下げることを支持しているわけではない。

この報告の一つのアウトカムである、症状のある低血圧が患者13,000人中9人のみに認められたとのことは、信じ難い。現実世界の診療では、強化降圧治療中、症状のある低血圧はそれほどまれではなく、おそらくそれがこれらの研究で多くの患者が、強化治療の目標を達成できなかった理由の一つであろう。

CITATION(S)

Bi Y et al. Intensive blood-pressure control in patients with type 2 diabetes. N Engl J Med 2024 Nov 16; [e-pub]. (https://doi.org/10.1056/NEJMoa2412006)

Original Issue: Vol.44 No.24