早期の弁置換術は、入院がより少ないことから、臨床的サーベイランスよりも優れていた。
大動脈弁置換術(aortic-valve replacement:AVR)は症状のある重症大動脈弁狭窄症(aortic stenosis:AS)患者に対して推奨されているが、無症状の患者に対しては綿密な臨床的サーベイランスが標準的な診療とされている。最近の2件の試験は、この推奨に異議を唱える新たなデータを提供している。
1件のランダム化試験(EARLY TAVR)において、非常に重症のASを有し駆出率の保たれた無症状の患者900人で、経カテーテルAVR(transcatheter AVR:TAVR)による早期の介入と標準的診療である臨床的サーベイランスが比較された。5年の時点で、予定外の心臓関連入院、脳卒中、死亡の発生率は、TAVR群のほうが臨床的サーベイランス群よりも有意に低かった(27% 対 45%)。この差は主に、臨床的サーベイランス群のほうが予定外の入院の発生率が高かったことによるものであり、これらの患者のほぼ半数は、症状が進行したために1年以内にAVRを受けた。
EVOLVED試験において研究者らは、さらに患者のリスク層別化を試みた。無症状の重症ASを有し、トロポニン陰性、心電図上で左室肥大が認められず、心臓の磁気共鳴画像検査で心筋中層の線維化の所見が認められた患者226人が、AVRまたはガイドラインに沿ったサーベイランスにランダムに割り付けられた。4年の時点で、死亡または予定外のAS関連入院は、早期AVR群の18%と保存的治療群の23%で発生し、有意ではない差であった。副次的評価項目の予定外のAS関連入院の発生率は、AVRのほうが低かった(6% 対 17%)。
CITATION(S)
Généreux P et al. Transcatheter aortic-valve replacement for asymptomatic severe aortic stenosis. N Engl J Med 2024 Oct 28; [e-pub]. (https://doi.org/10.1056/NEJMoa2405880)
Loganath K et al. Early intervention in patients with asymptomatic severe aortic stenosis and myocardial fibrosis: The EVOLVED randomized clinical trial. JAMA 2024 Oct 28; [e-pub]. (https://doi.org/10.1001/jama.2024.22730)
コメント
いずれの試験も、早期の治療、とくに低侵襲性のTAVRがアウトカムを改善することを示唆する。しかし、主な利益は予定外の入院が少ないことのようで、死亡や脳卒中に対する明らかな効果は認められなかった。EARLY TAVRではASがとくに重症であったこと、いずれの試験も残念なほど女性の組入れが少なく、臨床的サーベイランスが通常の現実世界の診療よりも良好であったと思われることに留意することが重要である。それにもかかわらず、これらのデータは患者との話し合いを形作るであろう。われわれは患者に、症状が生じるであろうこと、1~2年以内に緊急入院が必要となるであろうこと、そして今や症状が生じる前にTAVRに進みたい患者および臨床家を支持するデータがあることを、伝えることができる。