心血管疾患または高い心血管リスクを有する片頭痛患者に対するトリプタン系薬の使用

Triptan Use in Patients with Migraine and Cardiovascular Disease or Elevated CV Risk

トリプタン系薬の使用は、主要有害心血管イベントの有意なリスク上昇を伴っていたが、絶対リスク差は小さかった。

片頭痛治療の主力であるトリプタン系薬は血管作用性であるため、米国FDAはそれらを、心血管疾患または高い心血管リスクを有する患者には禁忌であると考えている。それでもなお、トリプタン系薬がそのような患者に処方されることがある。この研究で研究者らは、Mayo Clinicの22年間にわたる電子診療録を用いて、心血管疾患または高い心血管リスクを有し、かつ1年以上の片頭痛の病歴を有する成人において、トリプタン系薬の安全性を評価した。

全体で、トリプタン系薬の投与を受けた患者3,500人(年齢の中央値55歳)が、トリプタン系薬以外の薬物の投与を受けた患者3,500人とマッチされた(年齢、人種、性、片頭痛の型、前兆、心血管疾患、特定の血管リスク因子で)。治療開始から60日以内に、トリプタン系薬の投与を受けた患者52人およびトリプタン系薬以外の投与を受けた患者13人が主要有害心血管イベントを経験し、有意差が認められた(1.5% 対 0.4%、相対リスク4.0)。副次的アウトカム(すなわち、非致死的心筋梗塞、心不全、非致死的脳卒中)の相対リスクも同程度であった。sumatriptan(もっとも処方されたトリプタン系薬)、経口投与、慢性片頭痛患者、心血管疾患もしくは脳血管疾患の既往を有する患者に解析を限定しても、結果は変わらなかった。

コメント

トリプタン系薬以外と比較して、トリプタン系薬は、片頭痛と確立された心血管疾患または高い心血管リスクを有する患者において主要有害心血管イベントのリスク上昇を伴うが、この研究での絶対リスク差は小さかった(1.1%)。これらの結果は、このような状況においてはトリプタン系薬を避けることを支持するが、私の経験では、多くの片頭痛患者(心血管疾患を有する患者を含む)がトリプタン系薬を求める。トリプタン系薬が考慮される場合、著者らは、リスクと利益を比較する協働意思決定を推奨している。

CITATION(S)

Wang Z et al. Safety of triptans in patients who have or are at high risk for cardiovascular disease: A target trial emulation. Mayo Clin Proc 2024 Nov; 99:1722. (https://doi.org/10.1016/j.mayocp.2024.03.023)

Original Issue: Vol.44 No.24