抗利尿ホルモン不適合分泌症候群の管理に尿素を使用すべきか?

Should Urea Be Used for Managing SIADH?

最近のメタアナリシスは、尿素が抗利尿ホルモン不適合分泌症候群に対して安全かつ有効であることを示唆している。

水分制限は、緊急ではない抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(syndrome of inappropriate antidiuretic hormone:SIADH)を有する患者の管理の中心である。水分制限に反応しない患者に対して考えられる選択肢には、furosemide、furosemide+食塩錠、vaptan類(バソプレシン受容体拮抗薬)、尿素のいずれかを追加することなどがある。しかし最近の1件の研究は、furosemide+食塩錠に追加の利益がないことを示した(NEJM JW Gen Med Oct 1 2020Am J Kidney Dis 2020; 76:203)。最近導入された、より口当たりのよい尿素製剤が安全かつ有効であるかどうかを検討するために、研究者らは、SIADH患者518人を対象とした観察研究16件のメタアナリシスを行った。

これらの研究におけるSIADHの重症度は軽度から重度であった。(経鼻胃管または経口で投与された)尿素の用量は7.5~90 g/日の範囲であった。尿素による治療は血清ナトリウム値を有意に上昇させた(差の平均9 mEq/L)。サブグループ解析は、この増加が24時間、2、5、7、14日、1年の時点で有意であることを明らかにした。尿素による治療は、水分制限やvaptan類と同程度に有効であり、プラセボよりも優れていた。尿素は安全であり、患者の大部分が経口製剤に忍容性を示した。

コメント

ランダム化データはないにもかかわらず、このメタアナリシスはSIADH管理の選択肢として尿素の使用を支持している。1回の投与費用は10ドル未満で、投与は安全かつ有効であり、浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination syndrome:ODS)の症例は報告されていない。動物でのデータは尿素がODSを予防するかもしれないことを示唆している(J Am Soc Nephrol 2002; 13:1433)。私はSIADH患者における望ましい第二選択治療として尿素を使用し推奨するつもりである。最後に、尿素は肝性脳症を誘発または悪化させるかもしれないアンモニア濃度の増加を引き起こしうることから、尿素は肝硬変患者において相対的禁忌であることを臨床家は知っておくべきである。

CITATION(S)

Chander S et al. Urea to treat hyponatremia due to syndrome of inappropriate antidiuretic hormone secretion: A systematic review and meta-analysis. Am J Kidney Dis 2024 Oct 1; [e-pub]. (https://doi.org/10.1053/j.ajkd.2024.07.011)

Original Issue: Vol.45 No.1