遺伝的および社会的リスクスコアは心リスクの予測を改善できるか?

Can Genetic and Social Risk Scores Improve Cardiac Risk Prediction?

現在のリスク計算式の改善は、それほど大きくはなかったが、意味がある可能性があった。

遺伝学、保健行動、社会的環境に基づく大規模なデータセットを用いて、既存の心リスク計算式を改善することができるかどうかを探索する研究が増加しつつある。この研究では、ベースライン時に心疾患がなかった40万人(平均年齢56歳、白人95%)がU.K. Biobankから同定された。研究者らは、社会的、行動上、心理的およびその他の健康の因子に関する情報を組み入れた「多社会的(polysocial)リスクスコア」を開発した。その後研究者らは、多社会的リスクスコアと、以前に妥当性が確認されている多遺伝子リスクスコア(遺伝子変異の相加的影響に基づく遺伝的感受性を反映)を組み合わせて、American Heart Association(AHA)および英国のリスク計算式に追加する効果を調べた。

多社会的リスクスコアと多遺伝子リスクスコアを組み入れた結果、有害心イベントの10年リスクの予測能力がわずかに改善した。スコアで補正した計算式では、約10%の人々が高リスクまたは低リスク分類(10年リスクの閾値が10%または7.5%)に再分類され、これはイベント発生率のわずかな差に対応していた。

コメント

これらの社会的および遺伝的リスクスコアの追加はリスク予測をわずかに改善したに過ぎず、外部検証は困難であろう。しかし、典型的な介入につながりうるリスクの閾値をまたぐ再分類がよくみられ、意味がある可能性があった。米国では、AHAの新しい計算式PREVENTは、臨床家が郵便番号を入力できるようになっており、郵便番号は健康の社会的決定因子をある程度反映する(NEJM JW Gen Med Jul 15 2024Circulation 2024; 149:430)。この研究で探索されたリスク予測のばらつきは、計算式は一見正確にみえるが、計算式に加えて臨床的判断が依然として必要であることをわれわれに思い出させるものである。

CITATION(S)

Naderian M et al. Development and evaluation of a comprehensive prediction model for incident coronary heart disease using genetic, social, and lifestyle–psychological factors: A prospective analysis of the UK Biobank. Ann Intern Med 2024 Dec 10; [e-pub]. (https://doi.org/10.7326/ANNALS-24-00716)

Original Issue: Vol.45 No.2