ファブリー病患者さんの「元気に、長生き」を目指し治療をしています

  • 診療科内科
  • エリア北海道旭川市

中川 直樹(なかがわ なおき)先生

国立大学法人 旭川医科大学 内科学講座 循環・呼吸・神経病態内科学分野 准教授

中川 直樹(なかがわ なおき)先生

当医局の特性を活かして診断・治療にあたっています

旭川医科大学は北海道のほぼ中央に位置し広い医療圏を持っていることから遠方地からの患者さんも多数お見えになります。また当医局は循環器・呼吸器・神経内科、そして私の専門である腎臓内科も含めて幅広い領域をカバーしていることが特徴の一つです。ファブリー病は全身性の疾患で幅広い症状を認めることから様々な視点で診断・治療にあたっています。

ファブリー病とは

ファブリー病は、遺伝子の異常により細胞内の酵素活性の欠損または低下することで発症する遺伝性の疾患です。本来分解されるべき糖脂質が主に血管内皮に蓄積することで様々な臓器障害を発症します。また、ファブリー病の男性は「古典型」と呼ばれるタイプと「遅発型」と呼ばれるタイプに分類されます。古典型では、幼児期より原因不明の体の痛み、低汗症、被角血管腫などの症状を認め、成人になると脳・心臓・腎臓などに障害が出現し、脳卒中や心不全を発症したり、末期腎不全となり血液透析が必要になることがあります。一方遅発型では、上記の症状が一部に限られます。X連鎖性遺伝でありますが、「劣性遺伝ではない」ため、ヘテロ接合体女性患者でも男性同様に臓器障害が重症となることがあります。

ファブリー病の頻度は

ファブリー病は従来、男性4万人に1人(0.0025%)発症する希少疾患と考えられていましたが [Desnick RJ et al. McGraw Hill. 3733–3774, 2001]、様々な研究結果から有病率は従来考えられていたよりも高いと推察されています。それを実際に確認するために、私たちは北海道におけるファブリー病の実態を調査する研究を実施しました。対象は、以下①~⑤のうち1項目以上が該当する患者さんです。①60歳以前に心疾患・腎疾患・脳血管障害の既往のある患者さんが家系内にいる ②幼少期の四肢疼痛、被角血管腫、角膜混濁、低汗症などの古典型ファブリー病に特徴的な所見がある ③蛋白尿を認めるまたは維持透析をしている ④心電図・超音波での左室肥大がある ⑤脳血管障害の既往がある。 そして、2017年末までに2,325例の検査を実施し、6例(0.26%)のファブリー病患者さんが顕在化され、ご家族の診断・治療にも結びついています[Nakagawa N et al. J Hum Genet. 64:891-898, 2019]。さらに、ファブリー病では、冠攣縮性狭心症を高率に認めることが明らかとなりました[Kitani Y, Nakagawa N et al. Circ J. 83:481-484, 2019]。

ファブリー病の治療

2004年以降、日本でもファブリー病の治療で、酵素補充療法を行うことができるようになりました。2週間に1回の点滴を行う治療法です。この治療により心臓や腎臓などの臓器障害の進展を抑制し、患者さんの予後を改善するデータが次々と報告されています [Beck M et al. Mol Genet Metab Rep. 3:21‒27, 2015]。しかし、すべての患者さんに同じように効果が期待できるわけではなく、臓器障害が進展した患者さんでは期待した効果が十分に得られないこともあります。つまり、重要なことは、早期診断・早期治療です。しかし、治療薬があるにもかかわらず、気づかないまま生活している方がいるかもしれないのです。そうした観点からも今後もハイリスクスリーニングを実施しファブリー病が疑われる患者さんを顕在化したいと考えています。顕在した患者さんのご家族の診断は遺伝子診療カウンセリング室と連携し実施しています。是非、ファブリー病が疑われる患者さんを診療した際にはご連絡をいただければ幸いです。

医療機関名称 国立大学法人 旭川医科大学 循環・呼吸・神経病態内科学分野
住所 〒078-8510 北海道旭川市緑が丘東2条1-1-1
電話番号 0166-65-2111(代表)
医師名 准教授 中川 直樹(なかがわ なおき)先生
ホームページ https://amc1nai.net/外部サイトを開く