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精神科救急入院料(スーパー救急)病棟における
blonanserin貼付剤の使用実態調査
―急性期統合失調症患者に対するblonanserin貼付剤の早期治療反応―
精神科救急入院料(スーパー救急)病棟における
blonanserin貼付剤の使用実態調査
―急性期統合失調症患者に対するblonanserin貼付剤の早期治療反応―
福島 端ほか:最新精神医学, 26(3): 247, 2021
著者2名は大日本住友製薬株式会社(現:住友ファーマ株式会社)より講演料を受領している。
※本データは使用実態調査に基づくエビデンス(後ろ向き研究)であるため、ロナセンテープの有効性・安全性については、国際共同第3相試験(検証的試験)もご参照ください。
対象と方法
目的
BNS-p(blonanserin貼付剤)の急性期統合失調症患者に対する早期治療反応、有効性および安全性を観察する。
対象
2019年9月以降にあさひの丘病院スーパー救急病棟において、BNS-pを処方された統合失調症患者※20例
※:DSM-5で診断され、主治医としてかかわった患者のうち、オプトアウトを行い、診療情報の使用拒否の申し出のなかった人
試験デザイン
単施設、後ろ向き研究
BNS-p導入方法
1日1回、80mg(40mgを2枚)より貼付開始し、状態に応じて40~80mg/日の範囲内で調整した。

6.用法及び用量
通常、成人にはブロナンセリンとして40mgを1日1回貼付するが、患者の状態に応じて最大80mgを1日1回貼付することもできる。
なお、患者の状態により適宜増減するが、1日量は80mgを超えないこと。
本剤は、胸部、腹部、背部のいずれかに貼付し、24時間ごとに貼り替える。
評価方法
早期治療反応および有効性
- PANSS-EC合計スコア
[主要評価項目]
- PANSS-EC下位項目(興奮、敵意、緊張、非協調性および衝動性の調節障害)
- CGI-S
- SOFAS
[副次評価項目]
安全性
- 副作用、随伴症状
期間
- 研究対象期間はBNS-p貼付開始から3ヵ月または退院時、中止時とした。
PANSS-EC;Positive and negative syndrome scale-excitement component、SOFAS;Social and Occupational Functioning Assessment Scale
解析方法
- 主要評価項目の解析は、PANSS-EC下位項目から算出されるスコアについて統計量(例数、平均値、SD)を求め、BNS-p貼付開始前のスコアと貼付後各評価時点の スコアをpaired t検定により比較し、多重性を考慮するため、Bonferroni法で補正した。
- 欠損値の補完は行わず、貼付3ヵ月後もしくは退院時、中止時のスコアを最終評価時として解析に加えた。
- 統計学的有意水準はp<0.05とした。
- 副次評価項目であるCGI-S、SOFASの各評価時点におけるスコアも主要評価項目と同様の方法で比較した。
患者背景
- 評価対象20例の内訳は男性13例(65%)、女性7例(35%)で、平均年齢は42歳でした
- エピソードは、再発・再燃例が13例(65%)、初発が7例(35%)で、初発例のうち5例はアルコール依存症、うつ病、摂食障害、ADHD、診断名不明として精神科治療歴があるため、18例(90%)が精神科治療歴を有していました
- 前治療薬は、ありが10例(50%)、なしが9例(45%、うち中断例が4例、20%)、不明が1例(5%)でした
- 罹病期間は10年未満6例(30%)、10年以上12例(60%)、不明2例(10%)でした
- 精神保健福祉法における入院形態は措置入院14例(70%)、医療保護入院5例(25%)、任意入院1例(5%)と95%が非同意入院でした
早期治療反応および有効性
PANSS-EC合計スコア〔主要評価項目〕
- PANSS-EC合計スコアの平均値±SDは、BNS-p貼付開始時の27.3±4.8から4日後には8.8±5.6と改善し、7日後には20例中14例(70%)、1ヵ月後には20例中17例(85%)がスコア5まで改善し、以降3ヵ月後まで全例で改善効果が維持され、すべての評価時点で貼付開始時よりも有意な改善が認められました[p<0.001、paired t検定(Bonferroni法による多重性の調整あり)]
PANSS-EC下位5項目スコア〔副次評価項目〕
- PANSS-EC下位項目である「興奮」「敵意」は貼付開始後4日目から開始時に比べて改善し、以降3ヵ月後までのすべての評価時点において有意な改善が認められました(それぞれ、p<0.001、paired t検定)。
- PANSS-EC下位項目である「緊張」「非協調性」は貼付開始後4日目から開始時に比べて改善し、以降3ヵ月後までのすべての評価時点において有意な改善が認められました(それぞれ、p<0.001、paired t検定)。
- PANSS-EC下位項目である「衝動性の調節障害」は貼付開始後4日目から開始時に比べて改善し、以降3ヵ月後までのすべての評価時点において有意な改善が認められました(それぞれ、p<0.001、paired t検定)。
CGI-S〔副次評価項目〕
- CGI-Sは、貼付開始時20例全例が重症でしたが、4日後には軽減し、やや重症が3例、中等度が4例および軽症以下が12例となり、さらに7日後には14例(70%)が軽症以下まで改善しました。
- 1ヵ月後、2ヵ月後のCGI-Sで中等度以上の症状が残った患者はそれぞれ2例(10%)のみで、3ヵ月後においてはいずれも軽症以下でした。
SOFAS〔副次評価項目〕
- SOFASスコアの平均値±SDは、BNS-p貼付開始時20.3±7.3であり、ほとんどすべての面で社会的職業的に機能できない状態でしたが、7日後には51.0±15.1、1ヵ月後67.2±12.0、2ヵ月後68.0±11.8、および3ヵ月後65.5±7.9と社会的職業的機能が徐々に回復しました。
- 貼付後1ヵ月以降には、社会的、職業的または学校の機能においていくらかの困難はあるものの、全般的には機能良好なレベルまで改善しました。
- すべての評価時点で貼付開始時に比して有意な改善が認められました[p<0.001、paired t検定(Bonferroni法による多重性の調整あり)]。
安全性
- 中止・脱落した患者はいませんでした。
- 評価期間を通じて確認された副作用・有害事象は適用部位紅斑、適用部位そう痒感、便秘、アカシジア、振戦、眼球上転、呂律障害、嚥下困難、手指振戦、適用部位びらんの20例(100%)、48件でした。
- いずれも軽度から中等度で、重度の副作用・有害事象はありませんでした。
- 軽度の11例、18件はいずれも対処なしで、ほとんどが治癒しました。中等度の12例、30件の内訳は、適用部位紅斑11件、適用部位そう痒感10件、便秘4件、アカシジア2件、振戦、眼球上転、呂律障害が各1件でした。
- 適用部位に皮膚症状(紅斑)が見られた11例のうち、1例が紅斑のみ(1件)で、残りの10例は紅斑にそう痒感を伴っていましたが、いずれも保湿剤、局所ステロイド剤の投与、抗ヒスタミン剤の服用により、治癒に至った7例を含めてすべて対処が可能でした。
- その他の中等度の副作用・有害事象のうち、便秘に対しては緩下剤を使用し、アカシジアや錐体外路症状に対してはビペリデン等を使用し対処しました。
本調査のまとめ
- 95%が措置・医療保護入院の急性期統合失調症患者に対するBNS-pの有効性について、主要評価項目のPANSS-ECは投与4日目から、副次評価項目のCGI-S、SOFASは投与4日目、7日目から有意に改善した。
- 副作用・有害事象(中等度以上)として、適用部位紅斑11件、適用部位そう痒感10件、便秘4件、アカシジア2件などがみられたが、本調査において投与中止例はいなかった。
Expert's Comment
- ロナセンテープ国際共同第3相試験の結果を踏まえて、当院の急性期統合失調症患者における使用実態を調査した結果、早期反応や有効性、安全性において再現性が示唆された。
- 以上より、精神科救急入院料(スーパー救急)病棟においてロナセンテープ80mg(40mg×2枚貼り)からの貼付開始は、リカバリーを目指した急性期統合失調症治療の選択肢の1剤になり得ると思われた。
監修:医療法人誠心会 あさひの丘病院 院長 福島 端先生
(参考)SOFAS;社会的職業的機能評定尺度
- 患者の社会的、職業的な機能を優れた機能を発揮する状態から全く機能しない状態までを1つの連続線上にあると考え、1~100点までの整数値で評価を行うスケールである。
- GAFとの相違点は精神症状の重症度は考慮しないで社会的、職業的な機能だけに焦点を充てて評価を行う点と身体的な制限による社会的、職業的な機能の低下も評価の際に考慮する点が挙げられる。
American Psychiatric Association(編集). 高橋三郎ほか訳:DSM-Ⅳ精神疾患の診断・統計マニュアル p760, 医学書院 1996
GAF;Global Assessment of Functioning
稲田俊也ほか:観察者による精神科領域の症状評価尺度ガイド p173, じほう 2009
急性期統合失調症治療におけるロナセンテープの有効性と安全性:国際共同第3相試験(検証的試験)

急性期統合失調症患者さんに対する、ロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験の結果はこちらからご覧ください。