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【POINT.1】糖尿病の医療チームづくりへの参画をきっかけに資格を取得
小林 庸子 氏杏林大学医学部付属病院/薬剤部副部長
「教育入院」の仕組みの中で多職種とともに患者を支援

糖尿病との接点は、私が入職3年目くらいに混合病棟を担当することになった時に始まりました。ちょうどその頃、新たに糖尿病内科教授に着任されたのが、「チーム医療を推進していきたい」という先生でした。当時はまだチーム医療がそれほど盛んではなく、看護師や管理栄養士のほかに、薬剤師で適当な人材はいないかと私が推薦され、多職種によるチーム医療が始動することになりました。
その頃、糖尿病療養指導士の資格もでき、チームの皆で「資格を取りましょう」ということで、臨床検査技師など含め各職種が日本糖尿病療養指導士、西東京糖尿病療養指導士の資格を取得し、チーム医療・ケアを進めてきました。
それがスタートですので、糖尿病への関りは30年近くになります。よく専門・認定薬剤師などの資格を取得しても、部署を異動すると継続が難しいという疾患はありますが、糖尿病の場合は、各診療科に必ず何人かいらっしゃいますので、継続的に関わりやすかったと言えます。
さて、いまは教育という言葉を使うのは適切ではないとされていますが、当初は「教育入院」という仕組みがありました。今ではあり得ませんが、普通にお仕事されている方で、糖尿病と診断された人に「2週間入院してください」と伝え、食事や運動を含め総合的に習得いただきました。
いわば糖尿病を学ぶための合宿みたいなものです。毎日午後の1時間程度、医師や薬剤師、看護師、臨床検査技師と、コメディカルの糖尿病療養指導士がそれぞれの立場からお話しし、そのほかに食事の摂り方の紹介や、院内を歩くなど軽い運動のプログラムを実施していました。
もちろん、血糖値など検査値は良くないので薬物療法と血糖コントロールをしながらです。それが当時のトレンドでした。現在は外来で血糖コントロールがうまくいかずに入院した患者さんに、糖尿病教室に出ていただいています。
日常生活の維持・確保のため院内外での重症化予防が大切
当院の糖尿病教室は、糖尿病内科の医師以外にも眼科の医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、臨床検査技師や運動療法士の協力の下に、教育入院のプログラムの一環として毎日午後に開催しています。また、全国の大学病院に先駆けて毎日、糖尿病療養指導外来を開設し、私もチームの一員として関わっています。そのなかで糖尿病の病態に応じた食事や運動などの基礎的な治療法を習得していただき、それぞれの症例に応じた経口血糖降下薬の選択やインスリン療法の導入を行っています。
なぜそのような取り組みが大事かというと、やはり自覚症状がなく、どんどん病態が進行すると、結局は透析が必要になり、年間1人500万円かかってしまいます。医療費の問題も含め、患者さんの日常生活を確保・維持するために重症化予防が大切です。病院の診療報酬上は透析予防管理として患者さんの支援をしていますが、例えば10年間通っている人は、来院すると毎回「今日はどうですか?」と聞かれるため、意識レベルが高いと思います。
一方、特に痛くも痒くもないため、病院に行くのが面倒だと、病院に来なくなる人もいます。うまく自己管理して過ごしていれば良いのですが、ある日、だいぶ悪くなってから来院し、直ぐに透析導入という事例も少なくありません。そのような患者さんをどうフォローしていくのかが一つの課題と言えます。