【第1回】服薬指導の現場で陥りやすいパターンと心構えについて

五十嵐 康宏氏動機づけ面接トレーナー
Chair Person Reinstatement and Welcome Back Committee
The Motivational Interviewing Network of Trainers(MINT)


指導箋を詠み上げ、患者さんは「はい、はい」と聞いているだけ。何か質問はありませんか? と聞くと「大丈夫です」と返事が返ってくる。よくあるパターンに感じますし、一見問題がない様に思われます。先生方のご経験に照らし合わせて頂きたいのですが、必ずしも服薬実施率の向上につながらないパターンではないでしょうか?

また、患者さんの訴えが多すぎて、こちらはうなずくばかりで指導らしい指導が全く出来なかったという経験はありませんか?

どちらか一方が話すのでは無く、会話のキャッチボールの中で患者さんの知識レベルを把握し、考えを汲み取った上で、患者さんのニーズに沿った指導のパターンが最も効果的と考えられます。

患者さんのニーズに沿った指導のパターンを実現するために、「心構え」として4つのポイントをご紹介したいと思います。

  1. 良い指導は患者さんと先生方の「協働」で作り上げること
  2. 患者さんのもつ知識や考え方、想いなどを「引き出す」こと

    患者さんが萎縮しがちな指導の現場で、こちら側が引き出すことを心掛けることで協働の形がつくりやすくなります。

  3. 患者さんの「ためになる」こと

    トラブルを避けるためうけ流したり、あいまいにすると、患者に必要な情報が伝わりません。反対にこちらとしては患者さんのために一生懸命に指導しているつもりでも、患者さんの受け止め方によっては逆効果となることがあります。

  4. 「受け入れる」こと

    「患者さん」とひとくくりにするのではなく、一人の人間として受け入れる。人間はだれしも自身で考え、判断する力があることを受け入れてサポートする。一人一人がみな違う価値感、性格、努力の仕方、強みを持つことを受け入れる。患者さんの言葉の表面からは見えにくい、感情や考えを受け入れ、自分の言葉で表現する。などです。

4つの心構え

この4つの心構えを具体化させていくため、指導を進める「順序(段階)」、指導を通じて使用する「言語スキル」について、次回以降で説明していきます。