【第2回】服薬指導の流れを作る。言語スキルを活用して関係性をつくる

五十嵐 康宏氏動機づけ面接トレーナー
Chair Person Reinstatement and Welcome Back Committee
The Motivational Interviewing Network of Trainers(MINT)


患者さんとの協働的な指導を行うための順序(段階)は「関係性をつくる」「話題を決める」「引き出す」「計画する」の4つです。一つ一つの段階は簡単に達成されることもありますし、なかなか進まないこともあります。先を急がず、それぞれの段階を丁寧に達成することを心掛けましょう。停滞が著しいと感じたら一つ前の段階からやり直すとうまく行く事もあります。

順序(段階)

  1. 関係性をつくる
  2. 話題を決める
  3. 引き出す
  4. 計画する

今回は第1段階「関係性をつくる」について説明します。

この段階の目的は単純に仲良くなるとか打ち解けるということではなく、「指導内容について率直に話し合うことが出来る」関係性を生み出すことです。処方せんを持って来局される患者さんはどんなことを気にしているでしょうか。

薬の効果、安全性、薬価などはもちろん、病気のことや症状、または医療機関に対する不満など、服薬指導とは直接関係ないことで悩んでいるかもしれません。その場では直接解決する方法がないとしても、まずは患者さんの懸念を理解すること。これが関係性を構築することにつながります。

指導の中で使う言葉を「言語スキル」と呼び、下記の5つに分類されます。

5つの言語スキル

  • 質問
  • 聞き返し
  • 是認
  • 要約
  • 情報交換

患者さんの興味や関心を知る最も有効な方法は、「質問」です。「Yes, No」で答えられる「閉じた質問」より、答えを限定しない「開かれた質問」の方がより情報量の多い答えが期待出来ます

「質問」は有用ですが、多用すると尋問している様な雰囲気になります。これを避けるために「聞き返し」を行います。質問1回に対して聞き返しを2回以上使うと雰囲気が和らぎます。患者さんの発言の一部または全てを繰り返すのが「単純な聞き返し」です。単純な聞き返しを多用すると、ばかにしているかの様な雰囲気になるので、聞き返しのうち半分以上は「複雑な聞き返し」として発言のなかに含まれる感情、根拠、理由などを推測して聞き返すようにします。

さらに、複雑な聞き返しの中でも、特に発言に含まれる「努力や強み、価値感、特質」などを捉えて返すことを「是認」と言います。是認には、話者の自己効力感を高め、会話を円滑にする力があります。

また、これまでの複数の発言をまとめる「要約」には話を整理する、話題を変えるきっかけになる、などの力があります。

次回は「関係をつくる」のつぎの順序(段階)である「話題を決める」「引き出す」について、そして言語スキルの使い方と「情報交換」について説明します。