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【第3回】服薬指導の内容を決め、問題点を解決する
五十嵐 康宏氏動機づけ面接トレーナー
Chair Person Reinstatement and Welcome Back Committee
The Motivational Interviewing Network of Trainers(MINT)
「関係性をつくる」で患者さんの基本的な興味・関心がうまく引き出せたと感じたら2番目の順序(段階)「話題を決める」に入ります。この順序(段階)できちんと話題を決めることで限られた時間を有効に使うことにつながります。
この順序(段階)でも言語スキルを用います。例えば、「何を知りたいですか?」という開かれた質問で話題が決まることもあります。
患者さんの希望がはっきりしない時やこちら側から提案したいことがある時は「情報交換」のスキルを使います。一方的な情報提供を避け、お互いの持っている知識や考え方を交換するという考え方です。
情報交換の典型的な形は「聞くー話すー聞く」で、伝えたいこと一つにつき、二つの質問で挟みます。
情報交換
聞く(予備知識を)
↓
話す(伝えたい事)
↓
聞く(理解度ややる気を)
1回目の「聞く」はこれから伝えようとすることについてどの程度知っているか、興味関心があるかについて、2回目の「聞く」ではこちらが伝えた情報に対する理解や、思ったことを聞きます。この形を明確にとらなくとも、こちらから何かを伝える時に患者さんの了解を得ること、そして受け入れるかどうかは患者さんの自由であることを強調します。
「話題を決め」たら、3番目の順序(段階)に進んで懸念点を「引き出」します。
病気や治療に限らず、ある変化に対して、受け入れて前に進もうという気持ちと、現状維持を望む気持ちが同時に起きることは心理学的には当然のこととされ、「両価性」と呼びます。
二つの気持ちは次の形で表現されます。
両価性
- 「したい、したくない」:希望・願望
- 「できそう、難しそう」:能力
- 「(~だから)する、しない」:理由
- 「(なんとなく)やるべきだ、必要ない」:必要性
などです。
変化に向かう発言をチェンジトーク、現状維持を志向する発言を維持トークといいます。患者さんの発言の中にチェンジトークと維持トークが混在している時は両価性が存在すると捉えます。
維持トークを耳にしたときに一方的に情報を提供したり、説得したり、否定したりしたくなることは「正したい反射」と呼ばれ、これも心理学的には自然なこととされています。指導側の正したい反射は患者さんの現状維持を強めるのみならず、反発を生み、対話がぎこちなくなりますので注意して抑えます。
「引き出す」段階では維持トークは敢えて無視して、チェンジトークに対してのみ「質問」や、「聞き返し」「是認」をするように心がけます。このことで、患者さんの希望や自信が高まり、変化の方向に気持ちが動いていきます。また、「関係性をつくる」段階で出てきた患者さんが一番解決したい問題や大きな目標を「要約」して再提示することも、現状維持からの脱却につながることがあります。
次回は最後の順序(段階)である「計画する」と、指導終了後の振り返りと継続的な指導力向上についてご案内します。