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【第4回】次の指導に繋げる。服薬指導の力を継続的に高める
五十嵐 康宏氏動機づけ面接トレーナー
Chair Person Reinstatement and Welcome Back Committee
The Motivational Interviewing Network of Trainers(MINT)
患者さんの発言から維持トークが減り、チェンジトークが増えてきたら4番目の順序(段階)である「計画する」に進みます。ここでは次の受診までにすることや、考えてもらうことを話し合います。
「スマート目標設定」を紹介します。「具体的な」「測定可能な」「達成可能な」「関連性がある」「期間設定がある」(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound) の頭文字をつなげたSMARTは、英和辞典には「賢い」という意味だと書いてあります。
「ちゃんとお薬を飲む」という目標をスマートに変換するための質問例を紹介します。
- (S)具体的かどうか?:どの薬ですか?それとも、すべての薬にしますか?
- (M)測定可能かどうか?:数値化するとしたら、残薬の数ですか?飲めた回数ですか?
- (A)達成可能かどうか?:助けを借りるなら、ピルケース、手帳、同居人のどれにしますか?
- (R)関連性はどうか?:この目標達成で改善したいのは、症状ですか?検査値ですか?
- (T)期間はどうか?:いつまでにこの目標を達成したいですか?
スマート目標設定の際も、引き続き4つの心構えを忘れず、5つの言語スキルを用います。ここでも「情報交換」スキルが役立つでしょう。

4つの心構え

5つの言語スキル

4つの順序(段階)
それぞれの順序(段階)がスムーズに進まない時は患者さんにとってその順序(段階)が必要であるということを意味します。むりやり順序(段階)を進めるとさらなる停滞をまねきます。1回での完結を無理に目指さず時間が来たら終了します。次に会った時に前回の要約から始め、話を続けたいか、新しい話をしたいかについて患者さんの希望を聞きます。
指導が終わったら振り返りをしてみましょう。次の指導に役立つのみならず、自らの総合的な指導力向上にもつながります。
-
全体を通してうまくいったと感じましたか?
ーどうしてそう感じましたか?
-
もし改善点があるとすれば、それは
ー心構えをうまく表現することでしょうか?
ー順序(段階)の進め方でしょうか?
ー言語スキルの使いこなしでしょうか?
今回ご紹介したのはMotivational Interviewing(動機づけ面接、エムアイ)という心理学的技法を服薬指導にあわせたものです。(一部の用語については、わかりやすさのために教科書と表現を変えています。)
エムアイはスポーツや楽器の演奏などの習い事に似ていると言われます。習い・練習することにより、誰でも実践が可能な半面、知識だけでなく継続した取り組みが必要です。もし興味を持たれたら「動機づけ面接協会(JAMI)」※1、「寛容と連携の日本動機づけ面接学会(JaSMINe)」※2、「動機づけ面接調査研究所」※3などの団体のホームページに詳しい情報が載っています。お試しの体験としてワークショップや勉強会などに参加してみてはいかがでしょうか。
最後までお読み頂きありがとうございました。先生方の服薬指導の一助になりましたら幸いです。
- 一般社団法人 日本動機づけ面接協会(JAMI)
- 寛容と連携の日本動機づけ面接学会(JaSMINe)
- 動機づけ面接調査研究所