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【第1回】在宅医療特化型として地域医療に貢献すること
小林 篤史氏株式会社佳林 カリン薬局 代表取締役
地域から求められる薬局へ

2022年4月に「在宅医療特化型 カリン薬局」を京都市下京区に開局しました。
薬局の地域医療への貢献がますます求められる中、地域や人と人との繋がりを大切に地域の「おくすりやさん」としてスタートに至った考え方や想いを交えながら、「地域から求められる薬局像」についてお話しします。
カリン薬局の近隣に病院やクリニックは無く、外来の患者さんはカリン薬局を選択しないと対応させて頂くことが出来ない状況です。在宅医療特化型といっても、薬局には構造設備基準に“在宅医療特化型”という表記はありません。医師の在宅療養支援診療所についても「在宅医療専門クリニック」という公的な表記は数年前までありませんでした。
しかし、医師も「在宅医療専門クリニック」をサブタイトルにつけて活動をされ、現在は受け入れられ地域に広がっていったという背景があります。そこで、在宅医療に取り組むことができる薬局の礎になりたいとの思いから、在宅医療特化型をサブタイトルにスタートアップを行いました。

カリン薬局は24時間365日体制を取っており、医療用麻薬(内服から注射まで。回収も対応)、無菌調整による輸液のミキシング・点滴・注射薬対応、医療材料・衛生材料の供給と管理、在宅栄養管理によるフォローアップなどに取り組んでいます。子供から高齢の方まで、また「予防 × 外来 × 在宅 × 救急災害」の医療を担うことができる薬局として、多様性を意識して活動しています。
地域住民に求められる薬局という視点で考えると、「相談薬局」としての雰囲気や、地域の「Mini Library」として「この薬局に来たら何か発見がある!」と、言ってもらえる店づくりも重要な要素になります。例えば、カリン薬局の待合室には「先代の知恵」と呼ばれる壁画を飾っており、遠い祖先が積み上げてきた技や磨きをかけた暮らしの知恵と作法を守り続ける地域文化を大切にしています。地域の文化や情報を発信する場としても、薬局は地域に貢献できるのではないでしょうか。
現在の保険薬局は多様性を求められる時代にあります。外来医療と在宅医療の患者対応のみならず、混迷する医薬品管理、電子処方箋などのICT対応、薬剤師としての専門性の追求と次世代の育成など、業務は多岐に渡ります。どれも大事なことですが、地域に向けて「どのような価値を提供できるか」が最も大切なのではないでしょうか。それは薬剤師が決めることではなく、地域からのニーズであり、しっかり人に繋がりサービスが届いているかという点が重要になります。
2040年に向けて、65歳以上の高齢者が人口の40%超を占める時代に入ります。また少子化により生産年齢人口の割合が大きく低下していきますので、医療機関を受診することや薬を取りに行くことに変遷が起こり、在宅医療のニーズも変わってくるのではないでしょうか。COVID-19がもたらした「人と人との距離感」に対する考え方が、コロナ後も残ることに対してどのように対応をしていくかが今後の課題となってきます。
また昨今、医薬品輸送の在り方が議論され、それらに対応する企業が新規参入しています。しかし、医療と商売を重ねた時に、医療の安全性が担保されなくてはなりません。日本がこれまで大事にしてきた国民皆保険という社会保障制度において、安全でかつ安心感を与えられる薬の管理を継続することが最も重要です。地域から求められる価値と残すべきことの間で、国民は今後ますます重要な判断が必要になってくるのではないでしょうか。
こうした背景を踏まえ、第2回では、これからの地域医療に必要な緩和医療について、具体的な取り組みをご紹介します。