【第2回】これからの地域医療に必要な緩和医療への取り組み

小林 篤史氏株式会社佳林 カリン薬局 代表取締役


緩和医療と薬剤師の育成

「在宅緩和ケア」という言葉について皆さんはどのように使われているでしょうか?実際にはこの言葉の定義は無いと言われており、“在宅医療で緩和ケアを実施すること”を短く表現しているように思います。

一方、緩和ケアについては、WHOで「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。」と示されています。

現在の日本は超高齢社会や多死社会と言われ、またCOVID-19感染症も重なり、多くの方の臨終期に医療者は遭遇します。

では、地域医療で薬剤師は何が求められ何を還元できるでしょうか?有名なJAMAの文献にヒントがあります。

薬剤師は最期の時間を“自分らしく生きる”ための薬物療法の最適化を、医師と一緒になって考えてあげることが必要なのではないでしょうか。それは、薬を早くお届けすることでもなく、医師に言われた薬剤を提供するだけでもありません。患者やご家族の声に耳を傾け一緒に考えていくことだと思います。

しかし、地域ではまだまだ終末期の対応ができる薬剤師が十分にいる状況では無いと聞いています。もしかしたら、在宅医療に関しても取り組んだ経験が少ない薬剤師の先生もおられるのかもしれません。多くの患者さんから医療や薬剤師の力を必要とされているのに、薬剤師の経験値と対応力が結びつかないのは残念なことです。

そこで、日本緩和医療薬学会では、2年かけて以下の3つの活動と仕組みを作成いたしました。

  1. 地域緩和ケアネットワーク研修
  2. 在宅緩和ケア入門塾・在宅緩和ケア教育セミナー
  3. 日本緩和医療薬学会認証 在宅緩和ケア対応薬局

この活動は、在宅緩和ケアに対応できる薬剤師を育成するとともに、在宅緩和ケアに対応できる薬剤師が居ること、かつ、医療用麻薬や注射剤の無菌調整ができる薬局であることを地域の皆さまに「見える化」して、終末期を迎える患者さんが安心して地域で生活できる社会を築くことを目的としています。

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地域医療における在宅緩和ケアに関わる薬剤師育成と保険薬局機能の見える化

令和5年4月には全国で30近くの「日本緩和医療薬学会認証 在宅緩和ケア対応薬局」が誕生します。まだまだ地域偏在もあり十分な数ではありませんが、この活動を通して、在宅緩和ケアに対応できる薬局をより増やしていくことを目標にしています。

また、日本緩和医療薬学会以外の方々でも、終末期の対応について一緒に考え、協力していきたいと考えています。少しでも、地域の方が安心して終末期を過ごせる社会を皆様と一緒に築いていければと思っています。