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【第3回】これからの他職種・異業種連携のススメ方
小林 篤史氏株式会社佳林 カリン薬局 代表取締役
「他」職種連携
皆さんは“タ”職種連携の“タ”は「多」か「他」か?どちらを使いますか? また、使い分けは出来ていますか? 私は次のように考えています。
他:医療・介護・福祉を含めた多職種と、異業種・地域で役割を持って活動されている方を含めた広く大きな集団を表す時に使用
多:医療・介護の薬剤師以外の方の職種を表すときに使用
昔は「多職種」という言葉をよく使っていましたが、最近では「他職種」という言葉を使うことが多くなっています。おそらく、関係性を持つ方が多様化してきていることが背景にあると思っています。
この言葉の違いを整理しておくことは大切だと思っています。では、保険薬局では他職種連携はどのように進めていくとよいでしょうか?

例えば、カリン薬局は待合室に“京滋摂食嚥下を考える会”の京介食※を提供しています。京都の薬局で京介食を提供しているのはカリン薬局だけで地域の「食支援」を支えていきたいという想いから取り組んでいます。
自分もですが、歳を重ねて、高齢になっても美味しいお酒を飲みたいし、美味しい和菓子や美味しい食事も食べたいと思っています。普通の食事を食べると咽せてしまう方でも、少し柔らかくすれば食べられるかもしれません。そんな食事が提供できる世の中になることは自分の理想社会でもあります。そのため、地域への情報発信の場として、カリン薬局は京都ならではの京介食の提供に協力しています。
このような活動に参加しようと思った理由は、色々な方と話をして、何かを作っていくことが楽しいと思えることがベースにあります。そして、自分ごととしても考えられること。まずは「楽しむこと」が大事です。普段の仕事に加えて+αなことは時間も取られますが、色々な人と繋がりを持つことが出来て、そしてその繋がりは自分の“財産”になると思っています。是非とも、色々な集まりの場に誘われた時は「はい!」と返事をしてみてください。そうすると、新たな道が開けてくると思います。
一方で、薬剤師同士の連携については、これまで、様々な取り組みで薬薬連携を図ろうとしてきましたが、上手くいかないことが多くありました。
例えば、在宅医療を病院薬剤師の先生に体験してもらおうと考えても、病院に勤務していると1日や半日だけでも手続きの問題から体験実習を受けて頂くことは難しく、実際に在宅医療を見て頂くのは難しい状況にありました。それは、受け入れ側の企業体制も影響しています。
カリン薬局では地域の連携を意識して、多くの病院薬剤師の先生に在宅医療に関わってもらいたいと考えており、実習の受け入れを進めています。すでに実地研修をして頂いた先生からは、「在宅医療の臨床にとことん触れることができるのが嬉しい」や「在宅医療の基本的なところから教えてもらえる」と言った声を多くいただきました。
在宅医療を体験した病院薬剤師の先生が、患者さんが退院して地域に戻るときに、薬局とどのような連携が必要かを考えることができるようになったら患者さんの安心にもつながると思っています。
他職種連携という繋がりは、一緒に同じことを考えるチームを作ることです。お互いの専門分野の隙間を“心使い”で埋めていける関係性を構築し、思いやりをもった対応を常に心がけて行動してみてください。

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京介食とは、高齢や障害などにより、食の楽しみを享受出来なくなった方々のため、従来の機能面のみを重視した介護食とは異なり、利用者の心理面・感性にも配慮し、「美味しさ」「見た目の美しさ」「季節感」「地域の食文化」など、食事が本来有しているべき付加価値の面を持ち合わせた介護食のこと