- トップ >
- 学び >
- 薬剤師へ エキスパートが届けるメッセージ >
- Vol.17 求められる薬局の進化 地域に必要とされる薬局とは(全4回) >
- 【第4回】これからの在宅医療「小児医療×終末期医療×救急災害医療」
【第4回】これからの在宅医療「小児医療×終末期医療×救急災害医療」
小林 篤史氏株式会社佳林 カリン薬局 代表取締役
これからの在宅医療に必要なこととは
在宅医療の需要は2040年以降にピークを迎えると言われています。
一方で外来はピークを過ぎていると言われています。

出典:第7回第8次医療計画等に関する検討会(令和4年3月4日)資料1(厚生労働省)より抜粋
これからの在宅医療で求められる薬剤師の役割は、「訪問薬剤管理指導において、高度な薬学管理等を充実させる観点から、麻薬調剤や無菌調剤、小児在宅、24時間対応が可能な薬局の整備が必要」という考え方から、「訪問薬剤管理指導における麻薬調剤や無菌調剤、小児の訪問薬剤管理指導の実績のある薬局数及び患者数、24時間対応可能な薬局数を追加する」という考えに変わります。これが第8次医療計画の方針です。
入院医療は、病棟の医療スタッフが24時間体制で患者さんを医学的に管理します。在宅医療でも、場所が患者宅に移行しただけで、本質的には入院医療と同じスキームが必要です。
薬剤師が在宅医療に参加することで、薬物有害事象の発見につながり、88%の患者で改善が見られたというデータもあります。また、服薬コンプラアンスも、指示通りに服薬できる患者が、6割から8割に改善するなど、薬剤師が在宅医療に参加する意義は多いにあるのです。

出典:中央社会保険医療協議会 総会(第312回)在宅医療その4 P.123(厚生労働省)
また、全国平均で、麻薬調剤に対応可能な薬局は約8割、無菌製剤処理に対応可能な薬局は1割未満、24時間対応可能な薬局は約3割となっており、都道府県によってこれらの割合は異なりますが全体的に増やしていく必要があります。
一方で、人生の最終段階の患者さんへの訪問薬剤管理指導を実施している薬局はわずか26%にとどまります。ターミナル患者への薬学的介入を増やすことは喫緊の課題です。
医療的ケア児を支援する体制を薬局が構築することも、極めて重要な課題です。医療的ケア児とは、人工呼吸器や胃瘻等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童のことで、全国に約2万人いると言われています。
小児への在宅医療は増加しております。小児の薬学管理は難易度が高く、小児在宅への参加はハードルが高いかもしれません。また一方で、2万人の医療的ケア児に対して、月当たり約5000回しか訪問薬剤管理指導料が算定されていない現状は課題があると考えています。
COVID-19の猛威により地域包括ケアシステムの構築は遅れた部分もあります。慢性疾患を支えることに重点を置いたシステムから、「小児在宅×緩和医療×災害医療」がメインとなり、それらが重なり合う時代へ突入していきます。在宅医療に関わる薬局の機能分類もされるかもしれません。
医薬品がなければ医療は成り立ちません。医薬品を患者さんに届けることは極めて重要です。薬局は国民の生命と健康を守る重要なインフラであり、薬剤師には自身の持つ薬学や化学などの専門的知識を社会に還元する責務があります。
「“配達” は在宅医療ではありません。」
病棟で提供される薬学管理を、患者宅で提供することが在宅医療です。多様な病態の患者さんの薬学管理に対応できるよう、高度な知識や経験の習得が必要です。
今後増大する在宅医療のニーズに、薬剤師がどのように応えていくのか? “薬をくれる人”から脱却していきましょう。
- 第7回第8次医療計画等に関する検討会(令和4年3月4日)資料1(厚生労働省)
- 中央社会保険医療協議会 総会(第312回)在宅医療その4(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000103907.pdf