【第1回】これまでの薬剤師による患者フォローアップ業務とは

益山 光一氏東京薬科大学薬学部 医療薬物薬学科薬事関係法規研究室 教授


令和元年の薬機法改正で、調剤後の継続的服薬指導に関する薬剤師の義務が導入され、令和2年9月より施行されたことは、既にご存知のとおりです。

今回、このコラムで、この継続的服薬指導(患者フォローアップ)について、様々な視点から見ていきたいと思いますが、第1回目は、患者フォローアップについて、これまでどのように実施してきたのかという視点を中心にお話いたします。

医師からの処方箋を持参して薬局に来局した患者さんに対して、処方箋に基づき薬を調剤して患者さんにお渡ししたら、そこで薬剤師の業務は終了であると思っている薬剤師さんはいないと思います。当然、薬の服用中に何かあれば薬局に連絡するように伝える等の対応をこれまでも実施してきたと思います。つまり、患者フォローアップは、令和元年に初めて導入された訳ではなく、患者フォローアップの義務化が初めて導入されたと言えます。

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医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等
の一部を改正する法律(令和元年法律第63号)の概要(厚生労働省)を一部改変

それでは、これまで患者のフォローアップは具体的にはどのような形で実施されていたのでしょうか。

薬剤師の皆様は、各自、このように実施してきたという自負があるかと思いますが、私どもでフォローアップに関する論文を確認(2021年2月1日現在にて調査)したところ、734 件の文献が引っ掛かり、その抄録を確認し、日本薬剤師会で発出している「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き」の定義に該当すると考えられる内容について精査したところ31 件で、さらにそれらについて、本文を精査した結果、日薬の手引きのフォローアップと類似性が高いと考えられるものは、症例報告 5 件と調査研究 8 件の計 13 件という結果でした。また、これらの論文の対象患者としては、「がん患者」を対象として含むものが最も多く、分析と評価の項目においてもがん関連のスケールを使用したという記載が多くみられている状況でした。

この結果に関しまして、皆さんはどのように感じましたでしょうか。多分、論文数が少ないと感じたのではないでしょうか。

話は少し変わりますが、病院薬剤師さんも過去、薬の調製等で対物業務が中心だった時期から、病棟配置の実施による対人業務の強化を図り、現在のような病院薬剤師の位置づけを築き上げました。その際、日本病院薬剤師会では、薬剤師が病棟業務を実施することの意義をエビデンス化することに力を入れるようになり、現在も、積極的に論文作成や学会発表に取り組んでおります。

一方、薬局薬剤師さんが、学会で発表するとか、論文を作成するという機会は、過去においては少なかったように思いますので、これまで、論文が少なかったこともある程度理解できます。しかし、現在、その様な機会も増えていますし、さらには、患者フォローアップや在宅業務の様な対人業務が増えてきています。そうした状況を踏まえて、論文や学会発表を視野に入れ、がん患者さんだけではなく、様々な患者さんのためのエビデンス作りにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。