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【第2回】薬剤師フォローアップに関する法改正の背景等
益山 光一氏東京薬科大学薬学部 医療薬物薬学科薬事関係法規研究室 教授
平成 30 年4月以降、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会において、薬機法見直しの検討を中心に、医薬品・医療機器等を取り巻く現状や課題について議論を行い、その結果として、同年12月25日に「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」が発表されました。
その中の「第3 薬剤師・薬局のあり方」での基本的な考え方の中で、地域包括ケアシステムの構築が進む中で、薬剤師・薬局がその役割を果たすため、関係者と連携して、患者に対して一元的・継続的な薬物療法の提供が重要であり、そのために、薬剤師は、調剤時のみならず医薬品の服用期間を通じて、服薬状況の把握による薬学的管理を継続的に実施することの必要性が記載され、令和元年に薬機法や薬剤師法等の改正が実施され、義務化された点を第1回目コラムで記載しましたが、加えて重要なポイントがあります。
今回の法改正で、明確に調剤後の継続的服薬指導が入った背景につきましては、まず、「平成30年7月5日 第4回 医薬品医療機器制度部会 資料1」 において、来局日以外の継続的な服薬指導の資料(図1)により、継続的な服薬指導を来局日以外に実施したことがある薬局は4割弱であるという実態に加え、当時の議論の中で、山口育子委員より、「外来で診てもらっているときに薬局を使っていたとしても、入院すると、そこでぷつりと情報が切れてしまいます。だとしたら、外来も入院中、そして退院した後も継続して、例えば薬局・薬剤師が服薬状況を把握できるような薬薬連携を進めていくことが不可欠です。そして、調剤した後、終わりではなくてフォローする体制づくり。そういったものをしっかり整えた上で、それをきちんとやっていないところは薬局として認めませんぐらいに言わないことには、一生懸命考えています、話し合っていますといっても、実態としては変わらないのではないかなと思います。」とのご指摘(平成30年7月5日 第4回 医薬品医療機器制度部会 議事録より)があったことが大きな後押しだったと個人的に感じております。

図1 来局日以外の継続的な服薬指導
平成30年7月5日 第4回医薬品医療機器制度部会 資料1※1より抜粋
これまでも、薬局内において、継続的服薬指導は実施してきたのだと思いますが、調剤後から次の来局までの間(来局日以外)に、フォローアップをするという対応は、多くの薬局で実施してきたとは言えない結果です。とはいえ、調剤後に患者さんに連絡するという積極的な行動を起こそうにも、よほどの緊急時でないとその実施は難しく、「何の権限で実施するのか」と問われると強く説明しにくい立場だった面もあるかと思います。しかしながら、今回の令和元年法改正で、薬剤師が必要と考えた場合には、服薬フォローアップを実施することが義務化されましたので、自信をもって対応して欲しいと思います。
この継続的な服薬フォローアップの義務化は、私の知る限り、諸外国には(明文化されてい)ない取り組みだと思います。世界で類を見ないスピードで高齢化の進んでいる我が国で、この取り組みがいかに有効であったか、国内外にうまく発信(第1回目コラムで話題にした論文や学会発表など)できるように実行していきますと、日本発のこれからの薬局の姿にも繋がるのではないかと期待しております。
- 平成30年7月5日 第4回医薬品医療機器制度部会 資料1