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【第3回】フォローアップ実施に向けた厚生労働科学研究結果に関する想い
益山 光一氏東京薬科大学薬学部 医療薬物薬学科薬事関係法規研究室 教授
令和2年度から4年度までの3年間、「薬剤師の職能発揮のための薬学的知見に基づく継続的な指導等の方策についての調査研究」の研究代表者として、継続フォローアップやかかりつけ薬剤師に関する調査研究を実施いたしました。詳細な内容は厚生労働科学研究データベースで確認してもらえればと思いますので、今回は、この中でも、『薬剤使用期間中の患者フォローアップ(研究班版)~適正な薬物治療共同管理計画に向けたフォローを実施するために(仮)~』に関して、お話したいと思います。
この内容は、実際のフォローアップの流れを示し、具体的にどのように実施する必要があるかという観点で作成しました。そのために必要な具体的事例を、その情報収集のためのフォーマットについて修正を繰り返しつつ、3年間で合計355件収集しました。これらの事例を踏まえ、最終的なフォローアップフローチャート(図1)が出来上がっています。
このポイントは、フォローアップを実施する理由、問題点をしっかり考えるところから始まる点です。フォローアップを行う理由、問題点(図2)にあるとおり、フォローアップを実施する患者さんに関して、アドヒアランス、副作用、患者さんに関する状況の3つのカテゴリーから、① 新規処方・処方変更時 ② 服薬アドヒアランス不良 ③ ハイリスク薬処方時(副作用の問題や患者に不安があるケース等) ④ 手技不良時(自己注射や吸入器等) ⑤ 副作用等発現時(自覚症状を含む) ⑥ ポリファーマシー・相互作用の可能性 ⑦ 服薬に関する不安 ⑧ 退院時 ⑨ 新薬(承認又は効能追加された5年以内のもの)処方時等の視点、さらに、患者さんのフォローアップの実施は、漫然と実施するのではなく、患者さん毎に前述の①~⑨のような問題点を見いだして、どのようなゴール(フォローアップを実施するごとに掲げる目標)を想定して、そのためにどのようなフォローアップ(確認)を実施するのかについて、検討を始めることを基本としています。
また、疾患毎のポイントも重要となり、今回、(1)心不全 (2)心筋梗塞 (3)脳卒中 (4)うつ病 (5)統合失調症 (6)睡眠障害 (7)糖尿病 (8)がん悪心嘔吐 (9)がん性疼痛 (10)認知症 について、フォローアップ(前評価・実施・評価) プロブレム・対処・ゴール例に関して、ベースとなる基本事項を記載しております。
今後、薬剤師会やアカデミアの皆様と協力して、好事例の収集及び公表を実施し、その内容の充実を図っていければと考えております。是非皆様方も、個別の患者さんに寄り添って、患者さんのことを考え、そのために必要な対応をお願いします。フォローアップが必要となる個々の患者さんに対する親身な対応の一つ一つが、全体的にみれば、薬局薬剤師の対人業務成果となり評価されていくはずです。
なお、本研究は、「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き(日本薬剤師会作成)」をベースにして、日本薬剤師会、保険薬局協会、チェーンドラッグストア協会の先生方に加え、アカデミアや医療関係者、さらに患者側からの先生方からなる親委員会を設置して、研究内容の協議を行いながら進めて参りました。ご協力頂きました先生方にこの場をお借りして御礼申し上げます。