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【第1回】これから進む医療DX、まずはその基盤であるオンライン資格確認からホップ
島貫 隆夫氏地方独立行政法人 山形県・酒田市病院機構 理事長
現在、国の進める医療DXが飛躍的に進化しつつある。オンライン資格確認、そして電子処方箋、さらには全国医療情報プラットフォームへ、ホップ・ステップ・ジャンプと跳躍する。DX(Digital Transformation)は、デジタル技術によって、社会や生活の形・スタイルを変えることであり、医療分野においては安全で質の高い医療提供と効率化を両立し得ることが期待される。その基盤となるのがオンライン資格確認で、全国の概ね全ての医療機関及び薬局が安全なネットワークでつながる。そしてそれを元に2023年1月から電子処方箋がスタートした。
医療DX推進本部が公表した「医療DXの推進に関する工程表」では、概ね全国の医療機関・薬局に対し、2025年3月までに普及させることとなっており、さらに「骨太の方針2023」では、電子処方箋の全国的な普及拡大に向けた環境整備、が盛り込まれている。今後はさらに、全国医療情報プラットフォームの整備や電子カルテの標準化に弾みがつくことになるであろう。現在進められている医療DXに関して、具体的な運用などを紹介し、それらの活用について述べる。
医療DXの基盤となるオンライン資格確認は、2021年10月から導入され始めた。ICチップ(電子証明書)を搭載したマイナンバーカードが「マイナ保険証」として使用され、2023年4月からはオンライン資格確認が原則義務化となった。このおかげで、医療機関・薬局の窓口では、直近の医療保険や自己負担限度額等資格情報等を確認でき、さらに診療・薬剤情報や特定健診等の情報を閲覧できるように整備された。ただし薬剤情報はレセプト情報であり、リアルタイムな情報ではない。このリアルタイム性というのは医療の安全性確保や効率化の視点では極めて重要なことであるわけだが、これは現在導入が進められている電子処方箋に譲ることになる。
オンライン資格確認の効果だが、まずは①窓口業務の効率化である。保険証券面の確認が不要になり、保険証提示やマイナ受付で確認することにより窓口の業務を効率化することができる。次にこれが最も重要なことであるが、②確実な本人確認である。高精度の顔認証により、保険証の不正利用防止につながる。さらに③薬剤情報や特定健診情報の参照であり、マイナ受付で同意取得することで24時間以内に限り参照することができる。(図1)

図1 オンライン資格確認の効果
当院では予約患者のオンライン資格確認を毎朝5時に自動で一括照会(20分)している。2021年6月〜2023年4月までのデータを図に示すが、「有効」以外の1.78%の患者で保険証確認をするだけでよく、受付業務の負担軽減となっている。(図2)

図2 日本海総合病院における予約患者の一括照会結果
全国でマイナ保険証の紐付け間違いが問題となっているが、これらは人為的なミスであり、丁寧に対応し修正しながら精度を上げていく他無いだろう。精度を上げて強固な基盤を築き、それを基に医療DXを推し進めることが肝要だと考える。