【第4回】電子処方箋を含めた医療DXの活用と今後の展望

島貫 隆夫氏地方独立行政法人 山形県・酒田市病院機構 理事長


ICTの活用において最も重要なポイントは、それぞれ独立したシステム運用を避け、システムを統合することである。そのためにはシステム間のAPI連携が大事であり、これにより作業は効率化され、また転記ミスなども防止でき、最終的には医療安全に貢献することになる。今後、電子処方箋情報がEHR(Electronic health record)と連携できれば、その利用は格段に増えることになり、医療DXにつながる。

電子処方箋では、リアルタイムに処方・調剤情報を共有できることが何より一番のメリットである。この情報はすぐマイナポータルに反映されるため、この活用方法について紹介する。

患者は、マイナンバーカードを用いてマイナポータルから処方・調剤情報を手軽にかつ十分なセキュリティ下に取得して、電子お薬手帳やPHR(Personal health record)に反映させることができる。この情報を、ご自分で利用するだけでなく、医療機関(救急を含め)、薬局、介護施設などに提示することにより、今まで苦労してきた現場における薬剤情報把握の負担が大幅に軽減することになる。

また、電子処方箋はオンライン診療との親和性が高い。そこで当地域では医療MaaS(Mobility as a Service)への取り組み準備を進めている。特に交通インフラが脆弱な中山間地域を対象に、どのくらい需要があるのかデータを集めて検討している。看護師と協力して、医療MaaSでオンライン診療を行い、電子処方箋を発行し、それを受けて地域薬局がオンライン服薬指導と宅配、そして支払いまでを完結できないか確認中である。

当地域では、調剤情報共有システムのデータを2次活用して、処方箋におけるインフルエンザ治療薬の調剤回数から、1ヶ月毎のインフルエンザ患者数を推測している。電子処方箋が全国に普及し、さらに院内処方診療所の処方情報も電子処方箋管理サービスにアップできるようになれば、全国のインフルエンザ患者数のリアルタイムな把握に活用することもできるかもしれない。電子処方箋が普及した暁には、データへルスでの様々な活用が期待される。

vol20_06-2
拡大

調剤情報共有システムから推測したインフルエンザ月次患者数

薬剤師の役割として、調剤時に限らず必要に応じて患者の薬剤使用状況を把握し適切な服薬指導を行う一方、患者の服用状況に関する情報を医師等に提供しなければならない。薬剤師がすべての医薬品の使用状況を一元的・継続的に把握し、地域住民の薬物治療の責任を負うためには、PHR/EHRを駆使して医療情報や患者情報を取得することが重要であり、そのようにして薬剤師はより安全な薬物治療に貢献できる。電子処方箋の導入はわが国の医療界にとって大きな一歩であり、今後の普及により、薬剤情報のより正確な把握、重複投与や併用禁忌の防止を通して、医療安全や医療の質向上に大きく寄与することになる。