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【第3回】待ちに待った電子処方箋、地域全体で面となって対応すべき!
島貫 隆夫氏地方独立行政法人 山形県・酒田市病院機構 理事長
電子処方箋は、オンライン資格確認を基盤として、紙の処方箋を電子的に運用する仕組みである。紙を単に電子化しただけと捉えられがちだが、ここから派生するメリットは計り知れないものがある。処方・調剤された内容が電子処方箋管理サービスに登録され、直近100日間のデータが重複投薬・併用禁忌等のチェックに活用される。また、患者はマイナポータルから自身の処方・調剤記録をリアルタイムに参照することができる。電子処方箋は医療安全に貢献し、経済効果もあり、医療や介護の現場での業務効率化に期待がかかる。
2023年1月26日から電子処方箋の全国運用が開始された。導入には、電子処方箋対応版ソフトウエアの適用や電子署名に必要なHPKIカードの取得が必要である。2023年現在、酒田地域では1病院、3診療所、29調剤薬局で運用しており、当院での電子処方箋発行件数は2023年7月上旬では16,282件、診療所では5,000件を越え、2023年8月現在まで安全に運用されている。さらに今後は病院、診療所、薬局の参画が予定されている。電子処方箋の対応では、医薬品マスターに関して医薬品標準コードや統一医薬品名を、用法に関しては電子処方箋専用のコードを実装し、規定の用法コードでは足りないところは「用法補足レコード」で対応している。
電子処方箋で重要なことは医療安全と業務の効率化である。電子処方箋の情報はリアルタイムに反映され、重複や併用禁忌のチェックが行われ、安全で無駄のない処方が可能になる。薬局側では処方データの入力等の業務を効率化でき、対物業務から対面業務への転換が期待される。さらに面で取り組むことにより正確で迅速な常用薬把握、救急や災害での活用も期待される。2023年10月からは電子処方箋でリフィルが利用できる予定である。
具体例だが、お薬手帳を確認した上でアムロジピンを処方しようとしたところ、手帳の記入漏れが重複チェックで判明し重複投与を避けることが出来たり、また、ロスバスタチンを処方しようとしたところシクロスポリン内服中であることがわかって処方内容を変更した事例があった。このように、重複・併用禁忌の効果が出てきており、さらに電子処方件数が増えてくれば、さらにその真価が発揮されることになるであろう。重複・併用禁忌のアラートのチェックだが、2023年6月8日の「電子処方箋等ワーキンググループ」において口頭での同意取得が検討されており、アラートがでてからの確認作業の負担を考えれば、一刻も早い実現を願うばかりである。
さて、電子処方箋が地域で活用されるためには、点や線ではなく面で対応することが重要である。そのため庄内地域では2地域の三師会と急性期病院で「庄内地域電子処方箋推進協議会」を立ち上げ普及活動を行っている。多くの医療機関や薬局の導入推進のためには、さらなる導入費用のサポート、診療報酬上でのインセンティブ、そして国全体での周知活動が望まれる。