中村 由喜氏TAYA研究会 代表/あおぞら薬局富士見店 管理薬剤師


女性は一生の中でホルモン分泌量に大きな影響を受けます。特に思春期から更年期では生理周期の中で変動するホルモン分泌量が心身に与える影響はとても大きいです。第一回は女性のライフコースの課題や疾患についての概要と薬局でできる支援体制づくりについてお伝えします。

厚生労働省が示す「女性ホルモン分泌量と女性の健康課題」の図(下図)を見ると、女性ホルモンは人生の各ステージで急激に変動し、健康課題もかわることがわかります。下図はライフコースを①思春期 ②性成熟期 ③更年期 ④老年期として考え、各ステージでの課題が書かれています。

厚生労働省の資料によると、2022年の女性の平均寿命は87.09才で、90歳まで生存する人の割合は49.8%となっています。生涯現役で生き生きと過ごすためには、女性ホルモンの変動により起きうる健康リスクを円滑に乗り越えることが重要です。そしてこの健康リスクは家庭や職場、そして地域社会などの影響も大きく受けています。

若年化した初経年齢、高齢化した初産年齢と生涯出産回数の減少は、生涯の月経回数を増加させています。このことは月経困難症や子宮内膜症などの婦人科系疾患リスクが高まる要因になっています。また未成年者は乳房がんや子宮がん予防等の検診機会がなく、早期診断を困難にして治療機会をのがす場合もあります。婦人科受診のハードルの高さも問題になります。そして妊娠を意識した時、そのような女性特有の疾患が発見され妊娠の中断を余儀なくされる事例もあります。女性のライフコースにあわせた課題に取り組むには、女児の発育発達での課題も含めて、早い段階から相談できる支援体制を築くことが重要ですが、その一歩手前で薬局が果たす役割は大きいと感じています。実際にどのような対応が薬局でできるでしょうか。

先ず、地域の方に、薬局は気軽に相談できる場所であることを認識してもらうことが大切です。その手段の一つとして、薬局の入り口に私たちが地域の方々にできること、していきたいことを書いた「のぼり旗」を掲げるという方法があります。私たちの薬局では「地域連携薬局認定」「女性の健康支援・相談事業」「がんサロン語りの場」などの旗を掲げ、処方箋をもたないと入れない薬局にならないように地域に開けた薬局であることを伝えています。のぼり旗の作成はネットで1枚から簡単に注文ができますので、オリジナルなものを作成しています。

また、患者さんの支援体制づくりとして、薬剤服用歴の「生活歴」の記録を活用することができます。私たちの薬局の業務手順書には生活歴に記載するべき事項を約束として載せています。嗜好品や職業に加え、どの程度生活する力があるのか、その問題点はなにか、生活支援はだれか、薬の服用支援はだれかなど、患者さんを取り巻く環境を把握できる情報を記載しています。

そして女性対応で語られたことの要点も「#家族の介護20240415夫80才認知症、失禁などの世話が大変で不眠」「#20240120生理痛がひどく受験が心配」など、様々な年代の患者さん方の解決していない、解決できない問題として薬剤服用歴の生活歴に記録しています。この記録は年単位でご利用いただいていると、ある日フェーズがかわり問題解決の糸口が見える貴重な情報となります。

次回からは思春期、性成熟期、老年期の課題、各ステージにおける薬局での取り組みをお伝えします。