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【第1回】近未来の薬局薬剤師の機能を考える
赤池 昭紀氏和歌山県立医科大学薬学部教授、京都大学名誉教授
近未来における薬局薬剤師の役割は、社会の高齢化と医療デジタルトランスフォーメーション(DX)により、大きく変わると予想されます。2015年(平成27年)に厚生労働省は、医薬分業の原点に立ち返り、薬局を患者本位のかかりつけ薬局に再編するために、「患者のための薬局ビジョン」を策定しました。かかりつけ薬剤師・薬局が持つべき機能の一つとして、服薬情報の一元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導が掲げられ、薬局機能の見直しが進められてきました(下図)。
今後、薬局DXの推進により対物業務を合理化し、対人業務を充実させることで、これまでの調剤業務に加え、専門性の高い薬学的ケアや地域密着型のヘルスケアを提供することになるでしょう。
かかりつけ薬剤師・薬局が必要となる患者像
出典:厚生労働省 第1回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキング 参考資料2 薬局薬剤師に関する基礎資料 より抜粋
この変化の中で、薬局薬剤師は在宅医療・介護関係者との連携を強化し、患者の自宅での薬物療法管理を行うことが求められます。超高齢社会・多死社会の到来に伴い、地域密着型のヘルスケアがますます重要になります。その中で、薬局薬剤師は地域の健康管理において中心的な役割を果たすことが期待されます。
特に、高齢者や慢性疾患を抱える患者にとって、適切な服薬管理と生活の質の向上に向けた薬剤師の支援が重要となります。また、予防医療に貢献し、地域全体の健康レベルの向上を先導することも期待されます。このような取り組みにより、薬剤師がその専門性を活かして地域医療に貢献し、さらに地域社会の健康支援においても欠かせない存在となることが求められます。
デジタル技術や情報通信技術を活用したヘルスケア(デジタルヘルスケア)の推進への参画も薬局の重要な課題です。電子処方箋、電子カルテ、遠隔医療、AIによる健康管理等の普及により、対物業務の合理化による対人業務の充実が進められるとともに、薬剤師の業務も変わります。薬剤師は患者の健康情報をリアルタイムで管理し、在宅・遠隔地の患者と対面あるいはオンラインでコミュニケーションを取ることなどの新しい役割が求められるようになるでしょう。
このような薬局DXの推進により、薬局薬剤師は、患者の健康・医療情報にアクセスし、薬の提供者から総合的な健康管理・疾病治療のパートナーへと進化することが可能になります。
近未来の薬局薬剤師は、専門知識の深化と多職種連携、地域密着型のケア・治療の提供、そしてデジタルヘルスケアの推進を通じて、患者の健康と生活の質の向上に貢献することが期待されます。