プロトンポンプ阻害薬は、安定心血管疾患患者の上部消化管出血を予防しなかった。
高リスク患者において、有害心血管イベントを予防するためのaspirinと抗凝固薬の使用は、上部消化管出血のリスクと関連することが示されている。現在のガイドラインは、このような状況で出血予防にプロトンポンプ阻害薬(proton-pump inhibitor:PPI)の使用を勧めている。
今回研究者らは、安定心血管疾患を有し、消化管出血リスクの低い患者17,600人を対象として国際前向き二重盲検試験を行った(研究の詳細は別報を参照のこと)。患者はPPIのpantoprazole投与群(40 mgを1日1回)またはプラセボ投与群にランダムに割り付けられ、さらに、直接作用型経口抗凝固薬のrivaroxaban(Xarelto)とaspirinの併用群、rivaroxaban単独群、aspirin単独群にランダムに割り付けられた。
全体として、PPIの使用は上部消化管出血イベントのリスクを低下させなかった。しかし、胃または十二指腸の病変からの出血を評価した事後解析では、PPIの使用はいくつかのイベントを予防したが(ハザード比0.45)、治療必要数(number needed to treat)は大きかった(982)。
CITATION(S)
Moayyedi P et al. Pantoprazole to prevent gastroduodenal events in patients receiving rivaroxaban and/or aspirin in a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Gastroenterology 2019 Aug; 157:403. (https://doi.org/10.1053/j.gastro.2019.04.041)
コメント
私は、PPIの使用が抗血小板薬と抗凝固薬を内服している心血管疾患または末梢血管疾患を有する患者の消化管有害事象を防げなかったことに驚いている。しかし、これらの患者は消化管有害事象のリスクが低く、サブアナリシスは胃十二指腸出血の予防における小さな利益を示唆した。この大規模な試験は、抗血小板薬または抗凝固薬を服用している消化管出血リスクの低い患者でのPPIの使用を支持しないが、リスクの高い患者は、出血イベントを予防するためにPPIによる治療を続けられるべきである。