患者の地域生活を支えるための統合失調症治療

【監修】

医療法人 赤城会 三枚橋病院
病院長 村上 忠 先生

村上 忠先生

本コンテンツでは、「患者の地域生活を支えるための統合失調症治療」をテーマに、医療法人赤城会 三枚橋病院 病院長 村上 忠 先生よりご解説いただきました。

三枚橋病院の特徴 ~地域の精神科医療を支えるために~

村上先生

 当院は、精神科単科病院として1968年に開設されました。当時の隔離収容政策のなか、すべての病棟を開放病棟とするという先進的な取り組みを行ってきました。

 当時の病棟はすべて2階建てであったため、患者さんは階段を昇降しなくてはならず、その結果、思春期・青年期での発症の多い統合失調症や中高年のうつ病患者さんの入院が多い傾向にありました。こうした背景もあり、現在でも当院では統合失調症の患者さんが全体の7~8割を占めています。そのため、早くから退院後の患者さんの生活の場となるグループホームや作業所に加え、現在でいう地域生活支援センターなどを開設してきました。そうした成果もあり、多くの患者さんが地域で生活をしながら治療を継続しています。

 その後、精神疾患の療養の場が病院から地域へと移るなか、精神科病院にも大きな変化が求められました。当院でも、2011年には一部の病棟で閉鎖運用を開始し、その後、精神科救急入院料病棟(スーパー救急病棟)を設けて、地域の精神科救急医療の拠点病院という役割を担うようになりました。

村上 忠先生

統合失調症薬物治療で大切にしていること

村上先生

 患者さんが自分らしく地域で生活するために、まずは患者さんが続けやすい薬剤を選択することが重要だと考えています。かつての、何よりも治療効果あるいは鎮静効果が優先されていた時代に比べ、近年では抗精神病薬の種類も豊富になり、有効性だけでなく安全性や服薬アドヒアランスに配慮しつつ剤形を選択することも可能になりました。。そのなかで、私は「患者さんが困っている症状の改善」を第一とし、下記のポイントで薬剤を選択します。そのためには、SDM(Shared decision making)を通じて患者さん個々のニーズを把握し、それに応えていくことが大切だと考えています。

患者さんが困っている症状の改善のための薬物治療のポイント

・抗精神病薬の効果が同等であれば副作用が少ない薬剤を選択し、できる限り少量で治療
・服薬回数、錠数が少なくなるよう処方設計
・液剤や口腔内崩壊錠といった服薬しやすさへの配慮
・注射剤やテープ剤といった内服以外の投与方法も考慮

統合失調症薬物治療におけるロナセンテープの印象

村上先生

 ロナセンテープの薬効成分であるブロナンセリンは幻覚・妄想などの陽性症状に関与するドパミンD2受容体と、認知機能に関連すると言われているドパミンD3受容体、錐体外路症状の軽減に関連すると言われているセロトニン5-HT2A受容体に対し選択的な親和性を有しています。また過剰な鎮静や代謝系の副作用を引き起こすとされる受容体への親和性が低いことが示されています<図1>。

 ロナセンテープは、ロナセン錠/散と違い薬物吸収に食事の影響を受けないことから、食生活が不規則になりがちな統合失調症患者さんにとって、より使いやすい剤形だと思います<図2>。さらに、入浴とロナセンテープの貼り替えを結びつけることで、保清を促す働きかけも可能になります。投与開始後早期に貼付部位の発赤など皮膚症状を認めることもありますが、ここでもSDMが重要となります。まずは皮膚の状態を確認し、適切な説明や処置を行った後、その上で患者さんと継続の可否について相談します。継続可能と決定した場合は、貼付場所の変更やスキンケア、ステロイド軟膏の使用などで対応し、その後の経過を注意深く観察するようにしています。

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<図1>

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<図2>

私はこう使う!ロナセンテープ使用の実態

村上先生

 ロナセンテープは患者さんの状態に応じて承認最大用量から使用を開始できるため、早期に精神症状を改善したい場合は80mg/日から開始することが増えてきました<図3>。ロナセンテープは非鎮静系の薬剤なので興奮の激しい方などには使いづらいと思われがちですが、私はロナセンテープに限らず薬物治療の主剤を非鎮静系とすることが多く、必要に応じて急性期の一定期間に限っては併用薬剤を用いることで対応しています。また、ロナセンテープは注射剤と比べて侵襲性が低く、拒薬傾向が強く注射剤を使用せざるを得ないケースでも受け入れが比較的よいです。このようなことから、ロナセンテープは幅広い症例で活用でき、有用な選択肢と考えています。

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<図3>

ロナセンテープの導入と継続のコツ

村上先生

 「テープ剤は貼るのが面倒なので、患者さんは経口剤を好むに違いない」というイメージもあるかもしれません。しかし、薬剤に対する考え方には、医師と患者さんとの間で大きなギャップがあり、テープ剤を試してみたいと考えている患者さんは意外と多いと感じています。薬剤選択を行う際、患者さんに「毎日、薬を飲むのと、テープ剤を貼るのと、どちらがいいですか?」と選択肢を提示して、患者さんの自発的な選択のもとでロナセンテープを導入すれば、治療の継続性も高まると思います。

村上 忠先生

ロナセンテープ20mg/テープ30mg/テープ40mgの製品基本情報(適正使用情報など)

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