再発・再燃予防を考慮した統合失調症薬剤選択におけるロナセンテープの有用性

【監修】

医療法人社団 二誠会 村上医院
院長 村上 健 先生

村上 健先生

統合失調症は再発・再燃、そして再入院を繰り返す疾患として知られています。そこで本コンテンツでは、「再発・再燃予防を考慮した統合失調症薬剤選択におけるロナセンテープの有用性」について、医療法人社団 二誠会 村上医院 院長 村上 健 先生よりご解説いただきました。

村上医院の特徴と地域における役割

村上先生

 当院は、東京都江戸川区に位置する精神科医院です。江戸川区の人口は約70万人ですが、精神科病床がゼロの地域です。そのため、当院では、軽症だけでなく、一般のクリニックよりは比較的重症な患者さんも診療しています。

統合失調症患者さんは、全体の約3割を占めており、平均年齢は50歳代です。病棟がないので、入院が必要な非常に激しい急性期の方は区外の他院へ紹介していますが、それ以外の患者さんは、急性期も含めて対応しています。

村上 健先生

統合失調症の治療目標

村上先生

 私が考える治療の目標は、患者さんの社会参加です。患者さんが働いたり、通学できるようになり、自身が希望する生活を送れるようになるのが理想です。しかし、なかには社会参加が難しい方もいらっしゃいます。そういった方でも、再発・再入院せずに症状が安定した生活ができるよう治療することが重要だと考えています。

この治療目標の達成に影響するのが、「服薬アドヒアランス」と「薬の効果」です。個々の患者さんに合った薬を、患者さんが継続して服薬できれば、再入院せずに自身が希望する生活を目指せると考えています。

統合失調症の再発・再燃の前兆(サイン)

村上先生

 統合失調症患者さんの治療目標を達成するには、再発・再燃の前兆症状をとらえ、適切に治療介入することが重要です。この前兆(サイン)には、「不眠」、「何となく落ち着かない感じ」、「表情が硬くなる」などがあります。
実際、統合失調症で再発が認められた患者33例を対象に再発の前駆症状を後ろ向きに評価した調査では、再発した日本人統合失調症患者の半数以上にみられた前兆期の症状は、再発前1週時では「不眠症」、「不安」、「食欲減退」、「倦怠感」、「心気症」などの他、「非協調性」、「猜疑心」、「興奮」、「幻覚による行動」といった急性期にもみられる症状が確認されました<図1>。
また、これらの再発・再燃の前兆は、普段の患者さんの表情や態度と比べて気がつくことが多いです。
オンライン診療では、顔色や細かな表情の変化がわかりにくく、態度も捉えることが難しいと感じています。施設の診療状況にもよりますが、できれば対面で診療するほうが、ちょっとした表情の変化は読みとりやすいと思います。

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<図1>

統合失調症が再発・再燃してしまう要因

村上先生

 再発・再燃してしまう要因のひとつに、High EE(High Expressed Emotion)が知られています。統合失調症の方はストレスに弱いので、診療中も、なるべくストレスをかけないように、怒らずに、優しく接することがポイントのひとつです。
また、「服薬アドヒアランス不良」も、統合失調症患者さんの再発を予測する重要な因子です<図2>。 統合失調症は、長期にわたる服薬が必要となる疾患です。その長期間の過程で、服薬アドヒアランスが低下してしまう患者さんがどうしてもいらっしゃいます。服薬アドヒアランスが低下する理由はさまざまで、たとえば、「調子がよくなったから飲まない」、「そもそも自分に薬は必要ないと考えている」、「基本的に面倒くさい」などが挙げられます。
このような要因を探り、解消することが、服薬アドヒアランスを向上させるためには重要です。

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<図2>

外来統合失調症患者さんの薬物治療方針

村上先生

 外来における維持期統合失調症治療では効果と副作用のバランスがとれた抗精神病薬を選択します。一方、外来患者さんが再発・再燃した場合、入院治療にならないよう、症状を早期に改善してあげることが重要ですので、効果を重視して薬剤選択します。

その際、服薬アドヒアランスを考慮することも重要です。服薬アドヒアランスが保たれていても再発・再燃した場合は、患者さんに合った薬剤に切り替えることが理想ですが、それが難しい場合は、主剤の増量や、併用も検討します。

EPSなどの副作用で服薬アドヒアランスが不良になり再発・再燃した場合は、投与経路や剤形の変更を検討します。一般的に、経皮吸収型製剤やLAIなどの血中濃度推移が安定する薬剤は血中濃度依存的な副作用の軽減が期待できます。また、支援者が服薬を視認できる経皮吸収型製剤は、服薬アドヒアランスが不良な患者さんに対するよい選択肢になります。大事なのは、患者さんの嗜好に合わせて使用感のよい薬剤を一緒に探すことだと考えています。

 【外来統合失調症治療における薬剤選択の考え方】

維持期 効果と副作用のバランスを重視
再発・再燃時 症状の早期改善を重視
〇服薬アドヒアランス良好:患者さんに合った薬剤に切り替え、または主剤の増量・併用を検討
〇服薬アドヒアランス不良:投与経路や剤形の変更を検討
〇患者さんの嗜好に合わせて使用感のよい薬剤を一緒に選ぶ

再発・再燃時におけるロナセンテープの有用性

「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください 。

村上先生

 再発・再燃した外来統合失調症患者さんの薬剤選択肢のひとつが、ロナセンテープです。
ロナセンテープは、国際共同第3相試験(検証的試験)において、ベースラインからのPANSS合計スコアの変化量を各時点でみると、80mg群では1週時から、40mg群では2週時から多重性の調整をしない探索的な検定でプラセボ群との有意差が認められました<図3、図4、図5、図6>。私は、実臨床で90例にロナセンテープを処方していますが、効果発現の時期については同様な印象です。
また、介護施設のスタッフもロナセンテープの有効性を実感しているようです。彼らは、多少の興奮している患者さんなら対応可能なのですが、激しい興奮がある患者さんには手を焼いてしまうことがあるようです。そのスタッフから、「激しい興奮の患者さんには、ロナセンテープを使って欲しい」とリクエストされます。ロナセンテープは、急性期の興奮に有効性があり、さらに貼付剤であるため、吐き出されたり、内服薬を飲ませるときのように嚙まれたりする心配がないとの印象を持っているようです。

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<図3>

試験概要①
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<図4>

試験概要②
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<図5>

副作用 二重盲検治療期
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<図6>

私がロナセンテープの使用を検討するケース

村上先生

外来で再発・再燃してしまい、早期に症状を改善する必要がある患者さんに適していると考えています。幻覚・妄想などが激しい患者さんにもよい選択肢になります。私は、そういった速やかな効果が必要な患者さんには80mg/日から開始しています。また、40mg/日で開始した患者さんでも、2週間程度経過を観察し、効果が不十分であれば80mg/日へ増量します。

再発・再燃の前兆(サイン)があり、何らかの薬剤調整が必要な患者さんにも、使用を検討します。再発1週前に発現することが確認された「非協調性」、「猜疑心」、「興奮」、「幻覚による行動」といった急性期にもみられる症状にロナセンテープは効果が期待できます。

また、ロナセンテープは貼付剤であるため、注射剤を嫌がったり、視認性による安心感を求める患者さんの選択肢にもなると考えています。私は、統合失調症患者さんに薬剤を開始する際は、さまざまな選択肢を示し、患者さん自身に選んでもらいますが、貼付剤を選ばれる方もいらっしゃいます。貼付剤というと、「内服困難な患者さんに使う」、「家族が貼る」といったイメージがありますが、実はそうではありません。実際、当院では、家族よりも、ご自身で貼付されている方のほうが多いです。服薬アドヒアランスを維持するためにも、薬剤を開始する段階から貼付剤も選択肢として提案し、患者さんの好みをお聞きしながら選択することが重要だと考えています。

私がロナセンテープの使用を検討するケース ・外来で再発・再燃し、早期に症状を改善する必要がある患者さん
・再発・再燃の前兆(サイン)があり、何らかの薬剤調整が必要な患者さん
・注射剤などの侵襲的な治療を嫌がる患者さん
・服薬アドヒアランスが視認できることによる安心感を求める患者さん

急性期統合失調症治療におけるロナセンテープの有効性と安全性:国際共同第3相試験(検証的試験)

急性期統合失調症治療におけるロナセンテープの有効性と安全性:国際共同第3相試験(検証的試験)

急性期統合失調症患者さんに対する、ロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験の結果はこちらからご覧ください。

ロナセンテープ20mg/テープ30mg/テープ40mgの製品基本情報(適正使用情報など)

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