外来統合失調症患者の再発・再燃時におけるロナセンテープの位置付け

【監修】

医療法人社団ほっとステーション 大通公園メンタルクリニック
院長 長谷川 直実 先生

長谷川 直実先生

統合失調症は再発・再燃、そして再入院を繰り返す疾患として知られています。そこで本コンテンツでは、「外来統合失調症患者の再発・再燃時の治療におけるロナセンテープの位置付け」をテーマに、医療法人社団ほっとステーション 大通公園メンタルクリニック 院長 長谷川 直実 先生よりご解説いただきました。

大通公園メンタルクリニックの特徴

長谷川先生

 わたしたち「ほっとステーション」は、北海道札幌市に位置する多機能型精神科診療所です。精神科診療所を母体として、精神科デイケア、グループホーム、就労支援を行っています。また、ケースによっては、ケア会議を開催しており、多職種による地域連携にも力を入れています。デイケアには、一般精神科デイケアと復職支援のリワークデイケアがあり、患者さんの約半数は他の医療機関に主治医を持ちながら当診療所のデイケアを利用しています。

統合失調症患者さんの年齢層は幅広く20~60代です。病期については、発症前の前駆症状の方から急性期、維持期まで多様な患者さんがいらっしゃいます。

長谷川 直実先生
長谷川 直実先生とスタッフの皆様

精神科救急医療体制と大通公園メンタルクリニックの役割

長谷川 直実先生
長谷川先生

 『精神科救急医療体制整備に係るワーキンググループ』が作成した報告書1)では、精神科救急医療体制のイメージが示されています<図1>。このなかで、わたしたちは「かかりつけ精神科医」として、患者さんが希望する地域生活を実現できるよう関係機関と連携しながら診察しています。患者さんの声を聴き、再発・再燃しないよう患者さん個々人に合った治療体制を構築することが重要だと考えています。そのため、特に、精神科医療へのアクセスが難しくなる夜間や休日に救急化しないために平時の対応力を上げておくことはもちろん、もし悪化してもアウトリーチや電話などで患者さんが当診療所へアクセスできるようにしています。

1)厚生労働省 精神科救急医療体制整備に係るワーキンググループ:精神科救急医療体制整備に係るワーキンググループ 報告書, 令和3年1月22日, p6

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<図1>

外来患者さんにおける前兆期および再発・再燃時の治療方針

長谷川先生

 このような医療体制のため、再発・再燃の前兆(サイン)がある患者さんから、再発・再燃して入院が必要な患者さんまで、外来で診察・対応しています。
再発・再燃する原因はさまざまありますが、普段よりストレスを多く感じていたり、服薬アドヒアランスが低下しているときに再燃・再発するケースが多いです。そのため、環境の変化があったときは、表情が硬い、焦燥感、不眠などの前兆(サイン)を見逃さないように注意しています。
このような患者さんの症状の悪化に備え、平時から相談しやすい支援体制を構築しておくことが重要です。訪問看護は定期的に患者さんの状態を確認できるものの、症状悪化などの緊急時の対応は難しいです。そのため、わたしたちは、医師、看護師、精神科ソーシャルワーカーなどと協働して、デイケア、ナイトケア、電話で「相談できる場」を設けています。また、服薬アドヒアランスが保てるよう、患者さんに合った薬剤をSDM(Shared Decision Making)を通じて決定するようにしています。
もし症状が悪化した場合は、なるべく早く症状を軽減させてあげることが重要です。
ストレスが原因で症状が悪化してしまった場合には、環境調整を行いながら、患者さんの状態に合わせ、ドパミンD2受容体に親和性の高い薬剤を選択したり、場合によっては、一時的に鎮静作用がある薬剤を追加したりします。

服薬アドヒアランス不良のために症状が悪化した場合は、その要因にもよりますが、LAI(Long Acting Injection)や貼付剤が選択肢になります。貼付剤は、家族が貼ったり、デイケアのときに看護師が貼ったり、患者さんが貼っているのを看護師が確認できたりするといったメリットがあります。また、『手当て』という言葉があるように、看護師が貼付剤を貼ってあげると、安心したり、落ち着いたりする方もいらっしゃいます。そういった観点から、貼付剤は、医療者と患者さんの間を結ぶコミュニケーションツールのひとつになっていると感じています。

長谷川 直実先生

外来統合失調症患者さんの治療方針

維持期 〇平時から相談しやすい支援体制の構築
〇服薬アドヒアランスが保てるよう患者さんに合った薬剤をSDMを通じて決定する
再発・再燃時 〇再発原因に合わせ、なるべく早く症状を軽減させてあげる
 ⇒ストレスが原因の場合、環境調整と患者さんの状態に合わせて抗精神病薬を追加
 ⇒服薬アドヒアランス不良が原因の場合、患者さんの生活や嗜好に合った薬剤にSDMを実施して変更

再発・再燃時におけるロナセンテープの役割

「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください 。

長谷川 直実先生
長谷川先生

 再発・再燃した外来統合失調症患者さんの薬剤選択肢のひとつが、ロナセンテープです。
ロナセンテープは、国際共同第3相試験(検証的試験)において、有効性の主要評価項目である「6週時でのベースラインからのPANSS合計スコアの変化量」は、40mg群では-16.4、80mg群では-21.3であり、いずれの群もプラセボ群に対する優越性が検証されました<図2、図4、図5、図6>。
また、ベースラインからのPANSS合計スコアの変化量を各時点でみると、80mg群では1週時から、40mg群では2週時から多重性の調整をしない探索的な検定でプラセボ群との有意差が認められました<図2、図4、図5、図6>。
さらに、PANSSスコア項目別ではスライドに示すような結果が得られました<図3、図4、図5、図6>。
これらの結果や私の経験などから、ストレスが原因で症状が悪化してしまった患者さんに対して、ドパミンD2受容体への親和性が高いロナセンテープは有用性が期待できます。
また、効果発現の時期と患者さんや支援者の抵抗感の少なさ、そして注射剤より侵襲性が低いことから、急性増悪してしまったケースにも有用だと考えています。

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<図2>

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<図3>

試験概要①
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<図4>

試験概要②
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<図5>

副作用 二重盲検治療期
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<図6>

私がロナセンテープの使用を検討するケース

長谷川先生

 外来で再発・再燃して入院が必要な患者さんに対しては、早期の効果発現を期待して80mgから開始します。ロナセンテープは貼付剤であるため、ハロペリドール静注などよりは侵襲性が低く、患者さんの受け入れがよいと感じています。
加えて、再発する前にあらわれる過敏性にも有用性が期待できると考えています。過敏性は、過度に人目が気になったりする症状で、社会生活を阻害する要因になります。ロナセンテープは、こういった過敏性を示す患者さんにも適した選択肢だと考えています。
また、ロナセンテープは、薬物血中濃度推移が安定し、日内変動が小さいことが示されています<図7>。そのため、夜間に調子が崩れてしまうような、症状に日内変動がある患者さんに対しても、有用性が期待できると考えています。
さらに、薬物治療に抵抗感がある患者さんについても選択肢になると考えています。それは、ロナセンテープが貼付剤であるが故の「貼る安心感」、「剥がせる安心感」があり、患者さんが治療を受け入れてくれやすいからです。

長谷川 直実先生

私がロナセンテープの使用を検討するケース

・外来で急性増悪した患者さん
・過敏性により社会生活に不安がある患者さん
・症状に日内変動がある患者さん
・薬物治療に抵抗感がある患者さん

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<図7>

急性期統合失調症治療におけるロナセンテープの有効性と安全性:国際共同第3相試験(検証的試験)

急性期統合失調症治療におけるロナセンテープの有効性と安全性:国際共同第3相試験(検証的試験)

急性期統合失調症患者さんに対する、ロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験の結果はこちらからご覧ください。

ロナセンテープ20mg/テープ30mg/テープ40mgの製品基本情報(適正使用情報など)

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