【POINT.1】高齢患者が多いため、生活サポート体制と“認知機能”などADLを把握

岡本 怜也 氏クオール株式会社 クオール薬局あさひ店

“併用が推奨されない”組合せなど、ポリファーマシーを細かくチェック

薬物療法に関わる有害事象は処方薬数に比例する言われ、日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」によると、6種類以上で発生リスクは特に増加するとされています。糖尿病に限らず、仮に一疾患当たりの処方薬数が少なかったとしても、高齢者は多くの疾患を患っているため多剤併用に陥りやすい傾向があります。また複数医療機関からの処方により複雑化してしまうケースも多く見かけます。しかし、処方の一元管理ができる薬局だからこそ、ポリファーマシーに介入できることも多いと考えます。

特に糖尿病治療薬は内服だけでなくインスリン製剤などの注射剤もあります。多剤併用になりやすく、用法の複雑化や薬剤数の増加はアドヒアランス低下の原因にもなります。さらに、経済的な負担増により治療離脱につながる可能性もあるため、個々の患者さんの服用状況を見極め、必要に応じて医師に処方提案をするように心がけています。

この店舗では、基本的には循環器系の患者さんが多いのですが、合併症含め糖尿病の方が多く、100人ほどいらっしゃいます。近隣の診療所以外にも、市内には舞鶴医療センターや舞鶴共済病院など大きな病院もあり、そういう患者さんも来られます。そのため、お薬手帳を用いて他院、他科において、例えば併用が推奨されない組み合わせがないかなど、細かいところまで注視して、積極的な減量や処方変更の提案を行っています。

特に高齢者では低血糖など重篤な副作用に陥る可能性も高くなってきます。そのため重要なのは周りのサポート体制です。万が一、低血糖などが発生してしまった際に、家族が補助できるのか、独居ではないかなど、個々の患者さんの生活環境を積極的に把握するように努めています。さらに、ご自身のADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)低下の有無も、副作用リスクに大きく関わってきますので注意が必要です。

また、認知機能によって血糖コントロールの目標値が変わってきます。そのため小さな気付きが大切だと思います。例えば普段の会計時に小銭を使わず、一万円札など大きいお札のみの会計になってきたなど、少しの変化から、認知機能低下が無いかと、患者さんと接する中で注意を払っています。

そのほか、一部薬剤によっては低血糖の症状が出ることもありますので、そのような併用がある場合には、処方医等に連絡をとって、「こういう副作用のリスクがあるので、減量も考慮されたらどうでしょうか」と提案することもあります。実際、受け入れてもらえるケースは多々あります。例えば、血液検査の回数を増やしていただいたり、様子を見ながら減量して下さる等の事例に繋がっています。

生理機能低下を考慮した適正薬剤量を検証し、“非専門医”に提案・情報提供

現在、当薬局で対応している糖尿病患者は主に高齢者ですので、低血糖など重篤な副作用に至る可能性は比較的多いといえます。高齢者は肝機能や腎機能など、生理機能の低下がみられます。その点を考慮した適切な薬剤量を検証し、必要に応じて他剤への変更や、減薬などの提案のほか、副作用リスクについて情報提供をするように努めています。

少し前の事例ですが、高度な腎機能障害の患者さんに対して、いくつかの薬剤が通常量で処方されていたことがありました。eGFRの数値など腎機能によっては、禁忌となる薬剤も含まれていましたので、副作用リスクが高いと判断されるケースでした。その点を処方医に対して丁寧に疑義照会や、情報提供を行い、結果として減量され、いまも、大きな問題がないまま推移しています。

先生方もポリファーマシーは気にされていますので、そういった提案は概ね受け入れていただいています。個々の患者さんの検査値を確認した上で、トレーシングレポートなどの形で処方提案するようにしています。

特に高齢の糖尿病患者さんの場合は、血糖値やHbA1cなどの血液検査値は当然ですが、生理機能低下があるということを前提に、肝機能や腎機能などを重点的に確認しています。患者さんには、「腎機能や肝機能によって薬の量は変わったりします」など、細かく説明して、「こういう数値はどうですか?」と、少しでも気になる場合、必要な情報を引き出すよう心懸けています。

一時期離れましたが、長くこの店舗に勤めていたため、患者さんとは近しい関係にあるので、ほとんどの場合は検査値を教えてくださいます。それでも全員の検査値を確認できるわけではないので、その点が今はネックかなと思っています。